おおらかな時代

 散歩中に我々に声をかけて下さる人達の中には、高齢の方もおられる。昔、犬を飼ったことがあるが、今は犬がいないと仰る方が多い。ルーシーは中型だし、飛びつき癖があるため、(あ)は皆さんにあらかじめお伝えしているのだけれど、これらの方は「良いよ、良いよ」「オマエ、甘えっ子だな」と目尻を下げて近づき、可愛がって下さる。
 面白いのは、これらの方々が飼っておられた犬種。圧倒的にシェパードが多い。和犬ならともかく、なぜかシェパード。
 ご近所に住むおばあさんは、自分の人生で犬がいない時間はなく「(シェパード以外にも)土佐犬や秋田も飼ったことがあるよ」と仰る。小柄で優しげなおばあさんで、おとなしいシーズーを散歩されている。「今はこんなのだけど、私は大きいワンちゃんが大好きなの」と、ガサツなルーシーを可愛がってくれる。
 意外にも、これらの年代(70代?)の方々では、大型犬を飼う家庭が多かったようだ。
 皆さんは、ルーシーを撫でながら、自分の犬のことを思い出して話される。(あ)は、この時間が個人的に大好きだ。
 「シェパードやけど、(リードに)つないだことがなかったな。田舎やったからな」
 「シツケをしたことがないけど、忠実な賢い犬だった」
 小学校にお弁当を届けたり、肉屋に買い物に行ったりしていたというから驚きだ。シツケなしに、そんなことができるとは到底考えられない。訓練を受けたシェパードを譲り受けておられたのかもしれないけれど。
 今日の夕方に呼び止められた方は、面白かった。
 おじいさんが、こちらに向かって歩いておられたのが、すれ違いざまに「コリー!コリー!」と声をかけられた。(あ)は、我らの後方にコリーがいるのかと思い、そのまま通りすぎようとした。するとルーシーが踏ん張って、おじいさんに向かって尻尾をフリフリ。ヤツは自分がどんな呼び名をされようが鈍感だが、自分を可愛がってもらうことには超敏感である←ちなみに、小学生から「黒毛和牛!」と呼ばれたこともあるが(爆)
 さて、このおじいさん。自分のシェパードをひとしきり自慢された後で
 「そやけど早く死んでしもた。7才やもんなぁ」
 大切にされていたのに、それは残念でしたね・・・。
 「写真で真ん中に写ったのがイカンかったんやなぁ」
 写真の真ん中に写ったから早死にする(爆)?!
 (あ)が小学生の頃ならともかく、今どき聞かない話である。なんか懐かしいジョークだなぁ。

 ご近所や社会の目を気にせず、大型犬をゆったりと飼えた時代。先端医療やペット関連のサービスは元より、獣医さんも少なかっただろうけれど。その分、犬が犬らしく過ごせたんじゃないかな?おおらかな時代は、少しうらやましい気がした。