警鐘

 「少々危険だなぁ」と思い、迷った挙句に取り上げることにした。あくまで警鐘を鳴らすためなので、その点をご理解いただきたい。
 海外のジャーナリストが、各犬種について、いろいろな面から分析・研究し、ボーダー・コリーを「人間の最良の友」と結論づけた。この研究とは、各犬種の値段や寿命、知能やグルーミングの簡単さ等を考慮したものらしい。ジャーナリストは、著書の中で、その結果を表に示している。幸い日本では、まだ取り上げられてはいないようだが、海外では、この表だけが独り歩きし始めている。これは少々危険だと思う。

http://www.informationisbeautiful.net/visualizations/best-in-show-whats-the-top-data-dog/

 犬を飼いたい人が、この表だけを見て「じゃあ、ボーダー・コリーにしよう」などと簡単に決めて欲しくないからだ。
 ボーダー・コリーという犬種を、よく理解した上で飼わなければ、人も犬も不幸になる。(あ)は、自分が理解していると思っていたが、今考えると、これは完全な思い込みだった。これっぽっちも理解していなかった。周囲の友人や先輩飼い主さん達の協力や助言がなければ、環境に恵まれなければ、やってこられなかったと思う。すべての人々が、(あ)のように出会いに恵まれるとは考えにくい。少なくとも、環境は、ルーシーを飼い始めた頃に比べて、ボーダー・コリーのような活動的な犬を飼い難くなっている。
 人は、自分にとって、都合の良い情報しか見ようとしない。そして、耳ざわりの良いセールストークに、ダマされる。
 犬を飼いたい人間は「自分の住む地域にあるペットショップだから、下手な商売をすれば、悪い評判が立つ。そうなれば、やっていけないはずだから、ある程度は信用できるだろう」と思い。しかし、飼い主に一番近いはずのペットショップは、決して飼い主サイドには立たない。
 販売した犬が成長の過程で健康問題を呈しても「そんな交配とは知らなかった」「ネットのオークションで仕入れたから、相手の連絡先は分からない」と、逃げの口上だけは周到に用意しているが、それ以上のことをしようとしないのが現実だ。
 件の表だけが注目され、目先の利益だけしか考えないブリーダーが安易にボーダー・コリーを交配させ、遺伝病の因子を持った子達がたくさん世の中に出てきてしまう。遺伝病には、ルーシーのように股関節形成不全もあれば、NCLのように生命を奪うものもある。それだけは避けたい。
 市場のニーズが、ある程度満たされ「商品価値」が下がると、今度は珍しい毛色の子を作って付加価値を高めようと、やってはいけない掛け合わせをしてしまう。毛色は珍しくても、他の疾患を持っている可能性は高い。その挙句に捨てられたり、殺されたり。昨今、川や駐車場に捨てられた犬達の事件は、皆さんの記憶にも新しいはずだ。
 特定犬種を考えておられるなら「できる限り情報を得て理解した上で、飼う」ことが、犬も飼い主も幸せになるために、最も重要だ。庭があるか、犬に付き合う時間があるかは、大きな問題ではない。少なくとも(あ)はそう考える。
 その上で、できるだけ健康リスクの低い犬を迎えて、人も犬も笑顔で一緒の時間を楽しんで欲しいと考えている。