スラロ〜ム、できるかな?

 昨日から新学期が始まって、ルーシーは同級生や先生と久しぶりの再会でウキウキ気分。その横で(あ)はいきなりブルーになってしまった。先生が家庭犬訓練試験の話を始めたからだ。家庭犬訓練試験というのは、ジャパンケンネルクラブ(JKC)の実技試験で、犬が修得した技に得点をつけてレベルを裁定するものだ。ルーシーの場合、今まで習ったことを完璧にできるとすれば「中等科卒業」くらいらしい。人間だけでなく、ワンコも学歴が必要な時代なのかねぇ。先生は皆に挑戦するよう勧めていたが、とてもじゃないが考えられない。
 (あ)の暗い表情を見て取ったのか、先生は試験の話を止めて、急ぎスラロームの説明に入る。
 スラロームはアジリティの一部で、並んだポールを縫うように走るものだ。本当のスラロームでは、多数のポールが一直線に並んでいて、その間隔も狭い。しかし教室では4本のポール。渡された板は2枚で、それぞれに2本ずつポールを立てる。ポールの間隔は1メートルくらいなものだろうか。それも板の中央ではなく、長い一辺の端に設置するようになっている。
 2枚の板を少しずらした形で、間隔を開けて設置する。4本のポールが立った通路をつくるのだ。まず、通路の端に、通路の方向を見るかたちで犬を座らせる。飼い主は通路の向こう側に行き、フードを手に犬を呼び寄せる。犬が真っ直ぐ通路を通って来れば、褒めてフードを与える。ワンちゃんの中には、ポールを怖がる子がいるのかもしれない。
 これができたら、板を動かして通路を少しずつ狭くする。犬が通路を通り始めたら、すかさず「スルー」と声をかける。最終的には、これがコマンドになるそうだ。(ルーシーの場合「ウィーブ」は足の間をくぐるコマンドなので、区別することにした)通路の広さが顔や肩の幅ギリギリになってくると、ルーシーは通路を通らず迂回し始めた。ポールが怖いようだ。その場合には、通路を少し広げてやり直す。ドッグダンスと同じように、アジリティも「やる気」を維持させることが重要とのこと。成功率が50%を切ると、間違ったことを覚えてしまうとか。
 面白いと思ったのは、スラロームを教えるのにターゲットハンドを応用しないことだ。アジリティはタイムを競う競技だから、ターゲットハンドでは、どうしても犬の動きに無駄ができてしまうそうだ。ターゲットハンドは手にフードを持ち、それで犬を誘導する方法。犬がフードを追いかけてポールの間を動くと、確かに見た目はスラロームになるのだが、犬が描く円弧の部分が大きくなってタイムロスが出る。初めにポールの間を縫わせずに通路を走らせたのも「向こうに急いで行ったら、フードがもらえる」ことを教える意味もあるのかもしれない。
 ご近所ボーダーのピーター君は、なんと自宅の庭に本格的なスラローム用のポールを持っているそうだ。さすがスポーツ万能選手。プロ野球選手が自宅にトレーニング・マシンやジムを持っているようなものか?ルーシーの場合、トンネルは好きだけれど、ハードルが怖い。教室の低いハードル(小型犬でも飛べる高さ)すら跳び越えられない。ドッグダンスもさることながあら、アジリティはますますもって無理だと思う。それでも、何かに一生懸命になっているワンコを見るのは楽しい。失敗したって笑えるもんね。
 ルーシー、今度ピーター選手のかっこいいスラロームを見学させてもらおうね。