攻防

 土曜日はダンスの授業。しきり直しで新技クロスを学習中。この一週間で、ルーシーは自由に動ける手を動かすことが理解できたようだ。ところが、どう動かすかまでは理解していないらしく、相変わらず前に進もうとしたり、こちらの腕を手で引っ掻いたり。おかげで(あ)の右腕は傷だらけ。
 元来、ルーシーは足を触られるのが苦手なので、最初は(あ)が足を押さえることも抵抗していた。「だんだん足を押さえられることに慣れてきたな」と思ったら、今度は、自由がきく方の足を使って、こちらの手を押さえ、動かせない方の足を(あ)の手の下から引き抜こうとする。油断ならんヤツである。そのうち「クロス」の号令で、自由な方の足を動かすようになったは良いが、顔面や左腕、胸まで引っ掻かれた。
 先生の前でデモをしたところ「良くなってますよ」と褒めて下さった。しかし、こちらはルーシーの前足を押さえる時に、ビミョ〜にクロスし易い位置に誘導している。それで、ようやく二本の両足が重ねることができているのだ。こちらが手を放してしまったら、前足は重ならないかも。
 そもそも手足が短い上に、伏せると前足が外に向いてしまう。青空ちゃんのように、伏せの状態から、すました表情で前足を組むなんてムリなんじゃないかな?ま、やるだけやってみよう。ダメモトで。
 次にクリープをデモ。おやつ欲しさに、どうしてもお尻が上がってしまう。「上がりそうになったら、お尻をはたいてください」と先生。指示に従い、はたいて見たけど、全く反応ナシ。こちらを見上げた顔はツツ〜ッとヨダレを垂らし、お尻をはたかれたことすら気づいていない様子。「・・・まぁ、クリープは完成まで時間がかかりますから、そのつもりで頑張りましょう」と先生。呆れられたか?
 次の曲の振付を少しだけ考えたので、先生に見てもらう。
 「ん〜、良いですね」と仰った後で、「クルンが一回で終わりっていうのは、もったいない気がします。」「クルンの後にベッグを入れましょう」
 予想したとおりである。絶対トリックを詰め込まれると思ったんだよな。だけど、こちらは論理武装してきてるもんね〜。そうはさせるもんか。
 「でも、先生。この部分は8カウントないですから。オスワリさせて褒めて、ベッグさせて褒めて、次のツイテの指示を出すのは時間的にムリです」よく言った、私!
 「ダンスというのは、静止技以外で止まってしまうとダメなんですよ。流れが止まってしまうんです。」む〜、そこまで考えてなかったなぁ。
 「でもでもでも、他の部分でベッグを入れたら蛇足だし意味がないかも。」陣容を整えてディフェンス再開!
 「いえ、お客さんは良い技は何回でも見たいものです。蛇足ということはありません。」え〜、ルーシーのベッグが良い技?スッポンみたいなのに?
 そうなのだ。(あ)と先生の決定的な意見の違いは、(あ)は上手い下手はともかく、ルーシーに継続的に運動をさせることを目的としているが、先生はお客さん相手の出し物と考えているところなのだ。この前までウィーブが田植えだった私らには、いきなりハードルを5段階ほど上げられた感がある。
 昨年の夏は、暑さ負けでルーシーはストライキを起こした。その時のイライラや泣きたい気持ちは今でも忘れていない。秋の発表会では準備不足の結果、全く踊れていなかった。結果はハナから分かっていたけれど、自分自身やるべきことができていなかったことに、かなり凹んだ。
 今年も同じ事が起こるんじゃないか?それなら、出し物云々よりも踊れる振付じゃないとダメじゃないだろうか?そして、ルーシーには、夏本番を迎える前に新技を覚えてもらわなくちゃイカンのではないか?
 ふと見れば、ルーシーは、去年ストライキを起こした場所に伏せて休んでいた。この日は呼び戻して練習が再開できたが、今後はどうだろう?こちらの攻防も厳しくなりそうだ。