U先生によれば、子犬が自分の尻尾を追いかけて、クルクル回る回数は2〜3回とのこと。それくらい回れば、飽きてしまうものらしい。ルーシーの場合、長いときは1分、休みを入れながらだと3分近く続く。ストレスがたまっているのか心配したが、どうやら単純に遊んでいるらしい。家に来た当初は、体も小さかったが、今ではサークルの柵に体をぶつけ、大きな物音を立てる。適当なところで強制終了させなければ、借り物のサークルを壊しかねない。今朝のルーシーは、3分以上ガウガウ言いながら回転を続けている。異常な興奮状態だ。しかたなく、頼みのコーヒー缶を使う。コーヒー缶には鍵や釘が入っているので、振ったり地面に落としたりすると、大きな金属音がする。名前を呼んで怒っても、興奮状態では耳に入らない。普段は耳にしない音を聞くと、驚いて我に返ることが多い。また、犬の名前を呼んで怒ると、自分の名前を呼ばれたときは必ず怒られるものと、犬が勘違いしてしまうという。
 犬がこちらを見ていないのを確認して、側でコーヒー缶を上下に振る。ルーシーは音に驚いて、床にへたりこんだ。こちらの姿を発見して笑っているようだが、目が回って瞳がフラフラ動いている。どうして、そこまでやるかなぁ。それでも、なお、尻尾を追いかけようとするので、小さくコーヒー缶を振って注意をうながし、わざと犬が見える場所に缶を置く。マイルドに脅しをかけた訳である。
 先日あまりにうるさく吠え続けるので、私はリビングから廊下へと走り込み、床に置いた缶を蹴飛ばした。簡単に言えば「キレた」のだ。蹴飛ばしたコーヒー缶は、インパクトの後、壁に当たって、さらに大きな金属音を立てた。当然、ルーシーは唖然とした表情を浮かべ吠えるのを止めたが、旦那に言わせると、「あれは金属音より、アンタの剣幕に驚いてたんとちゃうか」とのこと。マイルドな脅しの後は、お母さんのコーナーキックしかないのかしら?