ジェントル・リーダー

 今日は雨が時折パラついたが、U先生に無理を言って拙宅に来ていただいた。その理由のひとつは、ルーシーが車道の脇を歩く時、最近車を追いかけようとするようになったからだ。
 ルーシーが我が家に来た当初、私は車が側を通るたびに、大きな声を出してはルーシーを怖がらせていた(傍から見たら、犬をいじめているように見えただろう)。我が家の近辺は車の通行量は少ないし、車に全く合わずに散歩できる道もある。しかし、小さい頃から苦手意識を植え付けておけば、車道を通らねばならない場合、自動車に自分から向かっていくことはないだろうと思ったのだ。これは、ある意味で有効だった。ルーシーは、自分の方向にやってくる車を恐がり、一旦歩みを止めるようになった。その一方で、車に自分が乗って出かけるようになると、「車は必ずしも自分に危害を加えない」と理解し始めたらしい。特に、自分の後ろからやってきて、去っていく車には興味を持って、リードを引っ張ることがある。
 U先生に相談したところ、ジェントル・リーダーを装着してはどうかと提案された。ジェントル・リーダーには鼻筋から首にかけてストラップがあり、リードを引っ張ると、これが締まる。一見、噛み癖を矯正するための器具のようだ。ルーシーがこれを装着したら、この器具のことを知らない飼い主さんがその姿を見たら、この犬は「危険」と勘違いして、自分の犬を遠ざけようとするだろうなぁ。そう考えると、なんだかルーシーが可哀想で装着するのがためらわれた。
 しかし、試してみたところ、リードを片手で持っても大丈夫だった。また、リードを緩めて歩ける。通常のリードなら、輪の部分を一方の手にかけ、もう一方の手でリードの途中を持たなければならない。リードは終始ピンと張ったままだ。また、今回に関しては、路上に落ちているものに口を持って行ったり、電信柱の臭いを嗅ぐことも少なかった。
 もちろんルーシーは嫌がって、散歩の途中で何度も立ち止まり、ストラップを外そうとした。だから、この器具に慣れるには時間が必要だと思う。それでも試す価値はあると実感した。
 なぜなら、ジェントル・リーダーを装着してU先生と1時間散歩した直後、通常のリードで散歩に出たところ、疲れているはずのルーシーは、地面にすりつけるように体を倒して、グイグイとリードを引っ張ったからだ。ジェントル・リーダーを装着して散歩をする間、好きな方向に行きたいという欲求を抑えていたようだ。そのストレスさえ遊びで解消できれば、そこへの行き帰りは「よい子」でいてくれるような気がする。