教室に着くと、ルーシーは早速U先生に甘え、ニカニカ笑う。大好きなリーフちゃんと取っ組み合い。2週間見ない間に、リーフちゃんはハナちゃんと変わらないほど、大きくなっていた。リードにはつないでいるけれど、3匹でひっくり返って、からまりながら遊んでいた。

 U先生からルーシーの避妊手術のことを聞いて下さったのか、N先生も様子を見に来てくれた。(あ)が、「手術が終わったら、急に体が成長するかと思ったのに、今のところ、その兆しがないんです。」と言うと、N先生は「この子は『ショー・タイプ』だから、あまり大きくならないと思う。手術が終わったからと言って、アジリティとかバンバン運動させたらダメ。」と仰った。
 ボーダーにはタイプが2つあって、一つは「スポーツ・タイプ」、もう一つは「ショー・タイプ」だそうだ。前者は骨格も大きく、体つきからして違うらしい。一方、ショー・タイプは比較的小柄で、ちんまりとまとまっていて、あまり大きくならないそうだ。体格が違うので適性が違い、ショー・タイプのルーシーには、あまりに激しい運動は難しいし、適当ではないそうだ。
 以前もこの言葉を聞いていたが、この時まで(あ)は全く理解できていなかった。頭の中に浮かんでいたのは、木下大サーカスで乳母車を押すワンちゃんや、老人ホームなどに慰問に行って、愛想をふりまくワンちゃん。ルーシーの場合、飼い主の言うことを聞かないので、人に感動を与える芸はできないけれど。
 ところが、これは大きな勘違いだったようだ。「ショー・タイプ」とは、ドッグ・ショーのことで、N先生に「血統書にチャンピオンとか書いてあったでしょ?」と指摘された。なんか書いてあったけど、(あ)はちゃんと見ていなかった。ルーシーがタヌキではなくボーダーコリーだったら、それで良かったからだ。それと、兄弟姉妹が何匹いるかだけ。いつか会えたら良いなぁと思って。ちなみに(た)は、血統書のチャンピオンはアジリティ等、スポーツのチャンピオンだと思っていたようだ。
 (あ)がボーダーを飼おうと思ったのは、働くワンちゃんが欲しかったからだ。別に羊を追いかけなくても良いけれど、人が大好きで、一緒に散歩をしたりボールを追いかけたりして、犬の「仕事」を喜んでやってくれたら、良いなぁと思っていた。エステやブランド物の洋服を着せて喜ぶつもりは全くない。
 「つまりは、人間にかしづかれるのが当たり前ってこと?」「どおりで態度がでかいはずだ。」
 犬でも「働かざる者食うべからず」という家訓は守らせる。人を感動させられないなら、お笑い芸人にして、ドッグフード代だけでも稼いでもらおうか?