ルーシーは、昨日、風呂場で怒鳴られ、その後はリビングで説教をされた。リビングのコンセントにいたずらしようとしたので、(あ)が「リーブ」とコマンドを出したのに、これをシカトしたからだ。(あ)は、これ以上、怒るのがイヤだったので、黙って首の後ろをつかんで、仰向けに抱こうとした。するとルーシーは、歯を剥いた。
 「ルーシー、なんでそんなに反抗的なの?お母さんが嫌いなの?お母さんも、そんなルーシーは嫌い。そんな子は、もうウチには要らない。明日、出て行きなさい」
 我ながら「こんな事を言って、果たして犬に理解できるのか?」とは思った。相手は大人になったとしても、3歳児くらいの知能しかないはずなのだ。大きな声を出したり、腰に手を当てたりすれば、こちらが怒っていることは理解できるだろうけれど。
 ところが驚いたことに、ルーシーは(あ)が言ったことを、ある程度までは理解していたようなのだ。
 今朝、クレートから出そうとしたら、ルーシーはなかなか出てこようとしない。上目遣いに(あ)の顔色をうかがっている。トイレシーツで用を足させようと廊下に出した。いつもなら(あ)に「首筋を揉んで」と甘えてくるのに、廊下の端っこに座り込んだままだ。こちらが近づくと、目を合わそうとしない。微妙な距離を保とうとする。
 とりあえず食欲はあるので(すぐに恐怖を忘れて要求吠えをした)安心しているが、叱り続けるのも考えものだ。何より怒り続ける方がイヤなのだ。ムチばかりでなくアメを与えたいのだが、そのきっかけが欲しい。あちらより先に、こちらが根負けしそうで、それが怖い。