滑り台と迷路

 ルーシーの体が大きくなるにつれて、(あ)は、彼女にできるだけいろいろな体験をさせてやりたいと思うようになった。ルーシーがあまりに頭を使わないので、頭脳が体並みに成長しているのか疑問だからだ。食欲でがんばれるはずの植木鉢ゲームも、なかなかやる気が出ないらしい。来客がほとんどない我が家では、あまりにも刺激が少ない。そのせいか、ルーシーは集中力も低いし、そもそも自分で考えようとしないので、ますます頭の中身は幼稚なままだ。
 という訳で、散歩のコースを若干変えて、新しい刺激を与えることにした。一つは滑り台。もう一つは、迷路である。
 滑り台は階段を上る段階で怖いらしい。以前、別の公園で滑り台を体験させようとしたら、あろうことか階段の途中から地面に飛び降りて、尻餅をついた。そっちの方が怖いっつーの!!
 今回(あ)が選んだ滑り台は二段式で長い。「二段式」というのは、スロープの角度が大きくとってあって、途中で平坦な部分があるからだ。そのため滑る部分の落差は大きくスピードが出る。
 米袋以上の重さになったルーシーを抱き上げて、滑り台の階段を上るのは少々キツイ。フウフウ言いながら滑り台の頂上に着くと、ルーシーは伏せの体勢をとり、へばりついて動こうとしない。むりやり体を抱き上げ、一緒に滑る。
 最初は、滑り出しで暴れたが、途中で動かなくなった。あっという間の体験なので、自分が何をしているのかも分からなかったようだ。無事着地した後も、しばらく呆然としていた。二度目は滑り出した途端、(あ)の方を向いて、口元を舐めようとした。「お母さん、頼むからやめて〜」ということらしい。ただし、このお願いは遅すぎた。あっという間に地面に着いてしまった。いずれにしても滑り台は滑るまでの恐怖が長い割に、滑っている間の時間が短いので、良い印象は得られないだろうなぁ。三度目を試すべきか?どうしようかなぁ?
 迷路は、全くもって失敗である。支柱の間にカラフルなメッシュ板をはめ込んだ迷路は、「お座り」「待て」「おいで」を練習するのに良いなと思ったんだけど。家では完璧にできる「お座り」「待て」も、外ではなかなか難しいようだ。 なんとか迷路の入り口でルーシーにお座りの姿勢をとらせて、(あ)だけが少しだけ迷路の中に入り、そこでルーシーを呼ぶ。そうして少しずつ迷路を進み、ルーシーに考えることを楽しませようと考えたのだ。ところが、ルーシーからは、迷路に入った途端(あ)の顔がメッシュ板で見えなくなり、すぐに立ち上がってしまう。そして頭を下げて、メッシュ板の下の隙間をくぐりぬけて来てしまうのだ。
 自分で考えることは楽しいと思わせたい。何か良いアイディアはないかしら?