身近な驚き

 クーちゃんが避妊手術を受けて、激しい遊びは禁じられている間、ルーシーの相手をしてくれたのが、ダックスのレモンちゃんとミカンちゃんのお兄ちゃんとお姉ちゃんだ。短い時間なら、他のワンちゃんも追いかけっこをしてくれるが、相手がルーシーだとスタミナが必要だし、乱暴者の相手は疲れるようで、すぐにボール遊びなど、飼い主さんのところに戻ってしまう。ルーシーはといえば、離れたところに伏せて、相手が自分を追いかけてくれるのを辛抱強く待っている。しかし、肝心のワンちゃんの興味はすでにボールに移っていて、もはやルーシーの存在など、頭の中に残ってはいない。
 (あ)は紐付きオモチャを使って、ルーシーを走らせる。投げたオモチャに向かって、ルーシーは喜々として走るが、追いついた途端やる気を失い「取りにおいで」と言いたげに笑いながらこちらを見ている。「持っておいで」と声をかけても、ルーシーは一向に帰ってこないので、こちらから取りに行くと、オモチャをくわえて逃げる。遊ばれているのは、こっちのようだ。
 オモチャを(あ)の手元に持ってくれば、「ひっぱりっこ」ができることを、ルーシーは知っている。「ひっぱりっこ」をする時、興奮のあまりガウガウ言ってしまうほどだから、本人も好きな遊びなのだろう。知っていながら持ってこない理由は理解できないが、バカにされているのは確かだ。そう考えると、ルーシーを追いかけるのもアホらしくなり、本人が飽きてオモチャを持ってくるまで、放っておくことにした。
 すると、遊び場所に来ていたレモンちゃんとミカンちゃんのお兄ちゃん、お姉ちゃんがルーシーの相手を申し出てくれた。ひっぱりっこでは、お兄ちゃんが大活躍。自分が連れていたワンちゃんのリードを妹さんに渡して、ルーシーと遊んでくれた。お兄ちゃんは自分のプライドにかけて、ルーシーに負けるわけにはいかないと頑張っていたようだ。疲れるとお姉ちゃんと交替して遊んでくれるので、ルーシーは終始ゴキゲンだった。
 小太郎くんのお母さんが「お兄ちゃん達は兄弟がたくさんいるみたいだけど、何人兄弟なの?」と訊くと、お兄ちゃんから「11人」という答えが返ってきた。ここにやってくるお兄ちゃんとお姉ちゃんは小学生だが、二人の間にはさらに2人兄弟がいて、さらにお姉ちゃんの下に7才の一番下の兄弟がいるそうだ。そんな大家族って、テレビの中のお話じゃないの?
 驚いた(あ)が「一番上の兄弟は何歳なの?」と訊くと、「大体26才くらい」普通の家庭では、自分の兄弟の年齢を訊かれて、はっきり何歳と答えられないのはおかしいけれど、11人もいれば、しょうがないよなぁ。
 うーん、ご両親を合わせて13人家族かぁ。2チームに分かれて、審判つきでバスケットやバレーボールができるなぁ。家族揃って回転寿司に行ったら、カウンターが半分埋まるかも。
 警察犬も大家族も、ご近所にいて全くおかしくないけれど、でもテレビの中だけの存在という先入観がある。実際ご近所にいることが分かると、驚かざるをえない。直木賞作家とか、大泥棒とか、ケン玉世界チャンピオンとか「実は近所に住んでいる」なんてことがあるかも。
 そう考えると、ちょっとワクワクしてしまうなぁ。ねぇ、ルーシー。