ルーズソックス

 公園でルーシーを走らせると、足に草の汁がつくようになった。肉球には泥が付着し、エルヴィスは緑に染まっている。帰宅後、タオルでゴシゴシ拭くのだが、なかなかとれない。
 バケツにお湯を入れて玄関で洗おうとしたら、ルーシーは柱と柵の間、わずか約20センチの隙間に逃げ込み、今度は出られなくなって往生した。
 しょうがないので、ルーシーの足を風呂場で洗うことにした。シャンプーを薄めてエルヴィスと肉球を洗うのだ。もちろんルーシーは嫌がって抵抗する。こちらが体を抱き上げても、前足を広げて風呂場に連れて行かれるのを阻止しようと無駄な抵抗をするのだ。
 風呂場に入ると、ルーシーは壁に自分の体を押しつけて拒否の態度を露わにする。尻尾を下げているので、(あ)がシャワーでルーシーの足を濡らそうとすると、尻尾まで濡れてしまう。邪魔なので、今回はレインコートが入っていたビニール袋で尻尾をカバーする。そして、有無を言わさず、薄めたシャンプー液を足につけて早速ゴシゴシ洗う。
 洗うのは簡単なのだけど、乾かすのに時間がかかる。風呂場を出た瞬間から、ルーシーは耳を倒して歯を剥き、洗面所の床に伏せて(あ)に自分の足を触らせまいとする。おかげで洗面所の床が濡れてしまった。また、なだめすかして足を一本ずつタオルで拭いても、ダブル・コートだからか、なんとなく湿ったままだ。
 そこで掃除用にとっておいた(あ)のお古のソックスを履かせてみた。都合良く足の裏の部分に穴が開いているので、肉球が適度に露出してサークルの床でも滑ることがない。問題がひとつだけあった。ルーシーは体を硬直させたままだ。後ろ足に違和感があるのか、なぜか一本だけ足を挙げたままだ。
 ルーシーは(あ)の顔を見上げて「何、これ?」と当惑の表情を浮かべている。別に罰を与えているつもりはないけれど、本人の情けなそうな姿を見ると可哀想に思えてきた。
 それでも、思ったよりもガフガフではなかったなぁ。今度は、散歩の時に履かせてみようかな?エルヴィスが汚れなくて良いかも。