フラッシュくん

 午後から雨と聞き、朝は長めの散歩をさせようと、いつものコースを反対向きに、先にF公園を通って歩くことにした。すると公園内の芝生の広場にウィペットのフラッシュくんとコッカースパニエルのメグちゃんがいた。
 フラッシュくんは現在9ヶ月。贅肉や無駄な毛のないスレンダーなボディからは想像できないが、実は13キロあるそうだ。体重だけだと、今のルーシーよりも重い。F公園には人が少ない時間で遊んでいることが多いそうだ。初めて出会った頃は、ルーシーが9ヶ月くらいだった。その頃は、フラッシュくんは生後5ヶ月くらいで、一緒に少し走っても、すぐにルーシーに追いつかれて、スタミナ切れで横座りをしていた。
 ところが、最近ではルーシーに負けないスピードとスタミナを身につけてしまった。猟犬の血が騒ぐのか、ルーシーを追いかけて走り回る。ルーシーも必死で逃げ、飼い主二人の周囲をグルグル回る。ルーシーは必死の形相で走るが、すぐに追いつかれてしまう。フラッシュくんは「ホラホラ、もっと速く走らないと噛んじゃうよ〜」と余裕を見せ、ルーシーの尻尾や耳の後ろを噛むような仕草をする。

 ある程度の時間を走ると、ルーシーの方が疲れて腹這いになる。気温が上がって、すぐに体が熱くなってしまうようだ。水をがぶ飲みし、休憩をとる。その間、フラッシュくんは水もほとんど飲まず、ルーシーの周囲をグルグル回り、吠えて「走ろう」と催促する。
 ハウンドの走り方の特徴なのだろう。フラッシュくんは、華麗なサイドステップで方向転換し、体の上下動も少ない。足が長いので、ルーシーが多少リードしていたとしても、すぐに間を詰められる。以前はルーシーが追いかける側だったのに、いつ立場が逆転してしまったのだろう。
 フラッシュくんはルーシーの尻尾が気になるらしい。初めは男の子だから女の子のお尻が気になるのかと思ったけれど、それが理由ではないようだ。どうやらルーシーのフサフサの尻尾が小動物に見えているらしい。前に見たアニマル・プラネットの番組でハウンドのレースがあったっけ。そのレースでは地面にワイヤーが張ってあり、そこには狐の尻尾のようなものが付けられている。スタートと同時に、人間がワイヤーをたぐると、尻尾が地面を滑るように動く。ハウンドがそれを目がけて全速力で走るというものだ。
 フラッシュくんは、お母さんが庭をシュロ箒で掃除していると大興奮するらしい。ホウキの先を噛んで離そうとしないという。お母さんが同じ位置に立ったまま、ホウキをグルグル回すと、いつまでも追いかけてグルグル走り回るので、目が回ってしまうという。
 ルーシー、赤鼻のトナカイじゃないけれど、おまえのフサフサの尻尾が役に立つこともあるんだねぇ。