都合の良い信頼関係

 現在(あ)にとって一番の悩みの種は、ルーシーの「飛びつき癖」と「人に向かって吠えること」である。
 ルーシーは、クーちゃんの兄弟や、レモンちゃん、ミカンちゃんの兄弟姉妹に可愛がってもらっているおかげで、子供達は大好きだ。散歩が小学校の登下校時間と重なると、出会う子供達ひとりひとりの顔を覗き込んで「私を可愛がって」とアピールする。偶然、知り合いの小学生に出会ったら「チューさせて」と飛びつこうとする。このような場合、こちらも、ある程度は「ヤバイ」と判断できるので、急いでリードを自分の手首にぐるぐる巻きにして、ルーシーを飛びつかせないように注意している。しかし、他のワンちゃんと遊んでいる最中に、自分の好きな人を見つけて、相手に駆け寄り飛びつくのばかりは止めることができないでいる。素振りが出た瞬間に「ルーシー、行かないよ」「リーブ」と注意しても、この時ばかりは聞く耳を持たないようだ。
 また、最近になって、ルーシーは人に吠えるようになった。それも相手は高齢者が多い。ひとつは、自分の周囲に高齢者がいないので、慣れていないことが挙げられる。高齢者は耳が遠いせいか声が大きく、動きが緩慢だ。また腰が曲がっている人が多いので、どうも不審に見えるらしい。
 「ルーシーが人に向かって吠えるのは、リードを装着している時なので、自分は逃げることができないから、相手に向かって吠えて威嚇をする。だから、ルーシーが吠えるのは、恐怖の裏返しである」と、(あ)は思っていた。しかし、ルイちゃんのお父さんに言わせると、必ずしもそうではないという。
 リードをしている時は飼い主が一緒だから、相手が反撃したとしても飼い主が自分を守ってくれると、ルーシーは判断して吠えていることが考えられるそうだ。
 ルイちゃんのお父さんのお話で、思い当たる点があるとすれば、ルーシーが吠える高齢者は女性が多いことだ。女性は総じて自分に危害を加えないし、そのことをルーシーも知っているはずなのに、何故吠えるのだろうと思っていた。つまり、この場合、恐怖の裏返しではなく、自分より弱そうな相手を選んで、権勢意欲を示しているということになる。なんちゅー卑怯者!
 それに、ルーシーが「飼い主が一緒だから大丈夫だ」と判断して吠えているとするならば、(あ)が今まで「ルーシー、大丈夫だから」と言い聞かせてきたことは全く的はずれで、逆にルーシーに要らぬ自信をつけさせていることになる。
 「慣れの問題だと思いますけどね」と、ルイちゃんのお父さん。しかし、エスカレートするのでは?
 「逆に、高齢者が好きで飛びつかれて骨でも折られたら、かなわんでしょ?」むむむ、それはそうなんですが・・・。
 犬が、自分の感情を抑制できずオーバーリアクションに出るのは若い証拠であり、一歳半くらいで収まってくると言って下さった。「そういうのがなくなると寂しいもんです」うーん、今の私には、とてもそんな余裕のコメントは言えません。
 「ただし、犬には自分の横か後ろを歩かせるようにして、自分よりも前を歩かせないこと。犬が立場を勘違いしてしまうから。」 これは「飛びつき防止」の観点からも有効だと思う。リーダーズ・ウォークを徹底しよう。
 しかし、だ。家の中で、仰向けに抱き上げたり足を触られたりしたら、尻尾を丸めて飼い主に向かって唸るクセに、家の外では飼い主に守ってもらえると思っているなんて、理屈に合わないではないか。あまりにも自分に都合良く考えてないか、ルーシー?