クンクン

 人のニオイを嗅いで、癌にかかっているかどうかが分かるワンちゃんがいるという。その診断は、肺や膀胱の癌については、従来のテストよりも信頼できるらしい。確かなところは分からないが、健康な細胞にはない生化学物質、アルカンやベンゼンの派生物のニオイを感知しているという説が有力だ。犬には、鼻にニオイを感知する細胞が人間の20〜40倍もあるため、トレーニングによって、一定のニオイを覚えさせて、探知したら人間に知らせるように教えることができるのだとか。
 このようなワンちゃんが活躍する分野は、麻薬・爆薬・人間を対象にした警察の領域から、医薬、環境保全知的所有権の保護など、さまざまな分野に広がっている。
 ロンドンのヒースロー空港では、海賊版DVDを探知するワンちゃんが二匹いるという。トレーニングでDVDのポリカーボネイト・プラスチックのニオイを覚えさせ、探知できるようになったそうだ。ミネソタ州の学校では水銀、モンタナ州では外来種の雑草、酪農業では発情した雌牛を探知するワンちゃんがいるそうだ。発情した雌牛を見つけることでは、雄牛よりもワンちゃんの方が上だとか。また、テロ対策の分野では携帯電話の探知犬の育成が進められている。テロリストが携帯電話を使って、遠隔操作で爆弾に点火するケースが多いからだろう。幸いにも、実際にこのワンちゃんが出動した例はないそうだけど。
 ちょっと気の毒な探知犬もいる。カビと南京虫の探知犬である。
 カビ探知犬は、18種類の有害カビを探知するようトレーニングを受けるらしいのだが、中にはアレルギーを引き起こすものもある。南京虫は近年ニューヨークで多く発生しているらしく、マンハッタンの高級ホテルやアパートなどから出動依頼が殺到しているという。ワンちゃんはベッドや部屋の中を嗅ぎ回って、南京虫のニオイを感知したら飼い主に教えるそうだ。ちなみに南京虫の探知犬は、1日6時間労働で1時間数百ドルを稼ぐというから、なかなかのやり手である。それ以上の労働になると成功率は落ちてくるし、自分が間違ったと分かると、ワンちゃんのやる気も低下してしまうそうだ。
 探知犬として働くワンちゃん達には、定期的な再トレーニングが欠かせない。南京虫の探知犬の場合は、中華テーブルの上に数個のプラスチックの箱を置き、その一つに南京虫の死骸、他にはカーペットの切れ端や壁土などのおとりを入れて、テーブルを回す。見つけたら、ワンちゃんは前足で箱を示す。当たりだったら、おやつがもらえる。あくまでゲーム感覚で覚えさせているそうだ。
 探知犬をはじめ、何らかの仕事をさせる上で、ワンちゃんの適性は瞬時に分かるそうだ。ボールを見せた時の犬の反応が、「一緒に遊んで」という態度だったら、その犬は仕事ができる。「ボール?要らない。寝てる方がいいや」という態度なら、向いていないそうだ。
 ルーシーは「お母さん、何食べたの?」とチェックは厳しいけれど、ボールを見せても、あまり興味を示さない。よしんばボールをくわえたとしても、離れたところに持っていくだけで、「一緒に遊んで」という感じではない。
 ダメだ、こりゃ!!