なぜ失敗から学べないのか?

事件のあらまし
 いつになったら、ルーシーは食べられる物と食べられない物を区別できるようになるのだろうか?この課題がクリアーされるには、一度大きな失敗をしないといけないのかもしれない。事実、ご近所に住むルーシーの遊び仲間フラッシュ君は、昔、綿入り布団を囓り、中の綿を食べて痛い目に遭ったそうだ。すぐに大いに苦しみ出して、食べた物を戻したそうだが、エクトプラズムみたいな長い綿が出てきて、飼い主さんは非常に驚いたとか。以来、フラッシュ君は布団を囓らなくなったそうだ。
 そして、いつになったら(た)は、自分が酔っぱらったら正常な判断ができなくなり、他人に迷惑をかけることが理解できるのだろうか?
 そういう意味で、二匹がやらかした失敗を考えると、(あ)は頭が痛い。
 昨夜も酩酊状態で帰宅した(た)は、ルーシーをクレートから出してリビングに入れたそうだ。(た)は、そのまま寝てしまったと思われる。
 そんなこととは知らない(あ)は、今朝ルーシーが起床後、トイレシーツの上に屈んでいるのを発見した。慌ててトイレシーツに手を伸ばすと、ルーシーは何やら口にくわえたままクレートへ逃げた。さては食糞か?見るとジャバラ状の小さな破片。捕まえて「いけない」と注意。しかしニオイがしない。吐瀉物か?昨日、何か変な物食べたっけ?
 (あ)がトイレシーツを片づけにリビングに入ると、ゴザの上に何やらこんもりした塊がある。どうやら吐瀉物らしい。リンゴの切れ端とロープの繊維、そしてなぜか導線???
 ルーシーは、リビングにあった扇風機のコンセント部分を囓って食べたのだ。さすがに全部は歯が立たなかったらしく、コードとコードに接続するジャバラ状の部分が食いちぎられていた。そこで、(あ)は、ようやく事態を理解するに至った。
 ルーシーの一回目の失敗は許せる。確かに、コンセントが電源に接続されていたら感電していただろうから、危険は危険だけど。接続されていないコンセントは、ルーシーにとってはプラスチックのオモチャにしか見えない。食べてしまったのは、こちらのミス、いや(た)の監督不行届だ。
 ただねぇ、アンタはアレを食べて気持ち悪くなって吐いたんでしょうが!しかも今朝も吐いたくせに、なぜ吐瀉物を食べようとするかなぁ?そして取り上げた(あ)に向かって、歯を剥くというのはどういうこっちゃ?!
 (た)に関しても、わずか2日前に失敗したばかりである。大体、酩酊状態で目配りができないなら、何故ルーシーをクレートから出すかなぁ?どうしてそこが理解できないのだ、オノレは。
 二匹とも再犯だ。情状酌量の余地はない。(あ)は、二匹とも市中引き回しの上、獄門の刑に処すつもりである。

事件その後
 午後のシツケ教室で、N先生に質問をぶつけてみる。先生の愛犬のうち一匹も、コンセント囓りの前科があるらしい。次の年には同じイタズラはしなかったらしいから、ルーシーがコンセントに興味を失うまで辛抱強く待つしかないようだ。また他の一匹は、最初の2年間と最後の6年間は、食べられない物を食べていたそうだ。最後の6年間はボケが始まったせいもあるとのこと。
 なお、吐瀉物を食べることに関しては、先生のワンちゃんも他の生徒さんのワンちゃんたちも、全員やったことがあるらしい。そう考えると、ルーシーには情状酌量の余地がありそうだ。経験から学んでよ、ルーシー。
 となると市中引き回しの上、獄門の刑に処すのは(た)だけか。さて、どうしてくれよう。