報復

 天気予報によれば、今日から火曜日まで雨模様だとか。いつもより早起きして、降り出す前に長めの散歩に出かける。雨が降ったらぬかるんで歩けない遊歩道を歩いていると、向こう側からフラッシュ君がやって来た。久しぶりに会うフラッシュ君にルーシーも大興奮。「遊ぼう」と相手に飛びつく。さっきまで寝ぼけていたクセに現金なヤツだ。
 結局ワンコどものアピールに負け、F公園へ向かう。朝露に濡れた地面を走り回り転げ回って、ルーシーはドロドロになった。雨が降る前なので、足だけを洗い体を拭くか、全身をシャンプーするかは思案のしどころだ。夕方の散歩もある訳だし、シャンプーしたら、また汚れてしまうかも。悩んだ挙げ句、全身シャンプーに踏み切った。
 予想どおり、ルーシーは歯を剥き唸る。今週の始めから、散歩から帰宅したら、玄関に簀の子を置き、その上でルーシーにゴロンをさせて足を拭く方法を試している。以前と同様に歯を剥き唸ることには変わりがないのだが、自分から伏せをするところを見ると、少し協力的になってきたようだ。また、歯を剥いて唸っても、こちらに噛みついたり威嚇したりはしないので、(あ)は「コイツは、こういう顔なんだ」と思って、それ以上ルーシーに注意せずに、足拭きに集中してきた。
 ところが今朝の全身シャンプーについては、ルーシーには想定外の出来事だったようだ。「足を拭くのならともかく、全身シャンプーは聞いてないぞ」「その上、ドライヤーもかよ」と腸が煮えくりかえっていたようだ。シャンプーのおかげで朝食が遅くなったせいもあろう。トイレシートではなく、マットの上にNo.1をした。
 粗相をしたからと言って、頭ごなしに怒るのは逆効果だ。しかし、そのまま朝食を与えて、後からマットを片づけても良いのだが、どうも確信犯の犯行という感じは否めない。また、このまま朝食を与えたら、マットに粗相をしたことを許すことになる。朝食を中断し、嫌がるルーシーをサークルに入れ、汚れたマットを洗い床を拭いた。
 ようやくありついた朝食を中断され、ルーシーはますます怒っていたようだ。食事中は従順を装い(あ)のコマンドに従っていたが、食べる物を食べ終わったら、今度は廊下にNo.1で「1」と大書した。完全に確信犯の犯行だ。
 もちろん(あ)は怒ったりしない。廊下に這いつくばって汚れた箇所を拭いた後、物も言わず、背後にいるルーシーの方を、ゆっくりと振り返っただけだ。ただし、思い切り白目を剥いて貞子のマネをしてやったけど。
 それを見たルーシーは、視線を逸らして、玄関先にあるサークルに向かってダッシュ。(あ)はサークルのドアを閉めて、顔を上げようとしないルーシーに言い聞かせた。
 「怖がるくらいなら、仕返しなんかすんな。アホ」