放浪癖

 今のところ、ルーシー自身にはないのだけれど、F公園のお友達の中には放浪癖のあるワンちゃんがいる。
 脱走癖といえば家からのケースが多いけれど、この場合はみんなで遊んでいる間にフラ〜ッと群れから離れて、独り気ままな旅に出ることを言う。悪いことにリードが外されている時に限って、こういうことが起きる。
 脱走・放浪癖のある、またはそんな癖がつきつつあるワンちゃんを見ると、犬種はさまざまで特定できない。やっかいなのは、一度味をしめてしまうと、癖になることが多いようだ。
 家からの脱走の場合、いろいろな人の体験談や本の内容から、理由は大きく三つあるように思う。
 一つは性の問題。雄のワンちゃんが、発情期を迎えた雌のニオイをかぎつけて、家を捨てて恋人に会いに行ってしまう。ロミオとジュリエットみたいだが、問題は去勢すれば、それで解決できることが多い。
 二つ目は退屈。毎日全てが同じの生活は、犬にとって安心できることだけれど刺激に欠けるようだ。中には屋内から窓を飛び出して冒険の旅に出たものの、高速道路で亡くなるという悲劇的なケースもある。
 三つ目は報復。この場合、飼い主が犬を残して外出し、その間に発生することが多い。また犬は飼い主が自分と一緒にいること、飼い主にかまってもらうことが当然と思っていて、「私を置いていくなんて許せない」「あなた(飼い主)が私にイヤなこと(留守番)をさせるなら、その罰を与えてやる」と考えているようだ。ボーダーコリーでは、このケースが多い。
 さて、話をF公園のワンちゃんに戻す。成犬で去勢もしてあり、ボール遊びが大好きで、公園のこの場所で仲の良い友達にも会える。ここでは楽しい遊びができることを重々分かっているはずなのに、遊びの途中でフラ〜ッと一人で放浪の旅に出る。ガウガウ言いながら走り回っているルーシーみたいのもいるので、騒がしさがイヤになり出かけちゃうのかなぁ。
 もちろん公共の場で飼い犬のリードを外すことは、どんなワンちゃんであったとしても、飼い主の支配から離れてしまう訳だから問題である。このような場において、飼い犬の行動を管理できないのは、利用する資格を問われても仕方がない。ケダモノだから人間の思惑は通用しない。ケダモノだから飼い主の予想や期待を裏切る可能性もある。そのとおりだ。その一方で人間の子供同様に、犬だって、初めから社会の一員になれる訳ではない。少しずつ学んで、少しずつ学んだことを実践して一人前になるのではないだろうか?ルーシーだって、他のワンちゃんの飼い主さんに「チューさせて〜!」と飛びついて迷惑をかける。それでも本人も少しずつ「飛びついても喜んでもらえないかも」と思い始めている。他の飼い主さん達も協力して下さっている。進歩には時間と確認の場が必要だ。もう少しご辛抱いただけないだろうか?
 ルーシーがどこかに行くような素振りを見せたら、(あ)は呼び戻しをすることにしている。今では成功率は85%以上である。なぜならば、(あ)が「ルーシー!」と声をかけると、ルーシーが戻ってくるよりも先に、他のワンちゃんが(あ)の前に整列してお座りするようになったからだ。一応、声をかけられたルーシーは(あ)の方を見る。そして、他のお友達がおやつをもらっていると分かれば、飛んでくるという訳だ。皆さん、ご協力ありがとう。これからもよろしくね。