中国の犬たち

次のオリンピック開催地が北京に決定した頃、(あ)は文化大革命の時代を生き抜いた二人と仕事をしていた。ジャパンタイムズの記事で北京で大規模な犬の処分が開始され、自宅で飼っているのに登録料が高いからと処分を許す飼い主が多いことを知り「中国は近代化したと言っても、中国人はペットを飼うだけの知識や愛情がないのではないか」と言ったら、彼女たちに「だって、彼らにとっては食べ物だもん」と言われ非常に驚いたことがあった。あれから十年近く経つが、状況は全く変わっていないようだ。

中国狂犬病発生で大量処分(ロサンゼルス・タイムズ紙)

5日間の処分で−それも無差別と言う話もある−5万匹以上もの犬が殺されたという。鍋や釜、爆竹を鳴らし、犬が吠えたら、その場で木製のモップの柄で殴り殺す。これは5日間の処分で、中国南西部の管轄当局が、ある郡に住む犬を全て殺した方法の一つである。先週、狂犬病の根絶を目的とした処分が行われ、5万匹以上もの犬が殺された。今年の夏、この地域に居住する20万人の市民のうち約360人が犬に噛まれ、3人が死亡し、うち一人は4才の女の子だった。

この処分で難を逃れたのは、軍隊および警察に所属する犬だけだ。処分された犬の飼い主には一匹につき60セントが補償金として支払われた。(略)

今年は戌年ということで、多くのカップルが寺院を訪れ、自分たちの子供が明るい人生を送れるようにと祈りを捧げる。しかし、犬は中国では人間にとって最良の友とはいえないようだ。中国の伝統的な考えによれば、犬が存在する理由は3つである。まず、他の動物を狩ること、家を守ること、そして食べ物になることだ。中国では、ペットとしての犬は、比較的新しいコンセプトなのだ。

共産党の厳しい支配の下では、ネコも犬も多くの人々にブルジョア物質主義の象徴として拒絶され、大衆に敬遠され、周囲から姿を消した。しかし、中国が20年前から資本主義的な改革を初めてから、犬を飼うことはステイタス・シンボルとなり、他人とのつながりが薄くなった社会では人間の友達となってきていた。現在の北京では、登録を受けた犬が40万匹以上もいる。

そのような状態の中でも、当局はたびたび野犬狩りを行い、都会で飼うには大きすぎるとみなした犬を没収している。

本日未明の政府による発表によれば、この8ヶ月の間に山東省のある市で狂犬病により16人が死亡したため、犬の処分を開始すると報じている。処分数については、明らかにされていない。

活動家は、絶滅危惧種以外の種について、中国には動物を保護する法律がないと指摘する。狂犬病予防に関する啓蒙教育が全くゆき届かず、狂犬病に関連し発生した死亡事故数は増加傾向にある。中国疾病管理予防センターによれば、狂犬病ワクチンを受けた犬の数は約3%にすぎない。(略)

処分が行われた郡の居住者に電話でのインタビューを行ったところ、犬の処分は無差別に見えたという。万が一の可能性を考え殺された犬のうち、ワクチンを受けた犬約4000匹も含まれていたという。

犬の大量虐殺が始まる前、当局は犬の飼い主に自分たちに犬の処分をさせる機会を与えた。

ある70才の農夫によれば、90世帯100匹以上の犬のいる彼の村では、7月27日まで全ての犬を殺し、約20匹を埋めるのに充分な大きさの墓を掘り、5つの墓に埋めるよう通達があったという。

大半の村民と同様に、この農夫も木に犬を吊して殺すことにしたそうだ。その方法でなければ、犬を生き埋めにするようにと言われていた。

ある女性の夫は飼い犬を絞め殺したが、飼い犬の死を悼む一方で現実的でもあった。「この犬を5年間飼っていたけれど、健康だったから」と、四人家族で犬を食べた。

管轄当局は、この郡に通じる主要な道には検問を設置し、車輌に乗り郡に出入りする犬はいかなる犬でも、その場で殺された。

ある店主は、処分担当者が通りを巡回し、それぞれの家や店を訪ね、ペットの散歩をさせる人を呼び止めているのを見たという。「担当者は、犬を連れた人を見つけたら、リードを渡すように 言うんだ。飼い主の目の前で殴り殺して、肥料の袋に犬の死体を入れて、次に行くんだよ。」