寝言

 毎日ルーシーが昼寝中に寝言を言う。以前は雨が降っている午後が多かったのだが、このところは関係がないようだ。夏の日差しを避けて散歩をするようになったら、朝食を食べた途端に横になり、それからはほとんど寝ている。昼頃様子を見に行くと、ガバッと起きて「おやつですか?」と、こちらを見る。ということは、この時点ではあまり眠りは深くないのかも。
 おやつを食べてから夕方の散歩までは、一生懸命に寝る時間らしい。時折、かすかに「フン」と「クン」という声が聞こえてくる。こちらが廊下を動くと、ルーシーは一瞬目を開けるが、あまり身動きをせずに寝たまま様子を窺っている。「ああ、夢か〜」と思っているのかも。隣のおばあちゃんの声や郵便配達のバイクの音がすると、耳だけ動かしている。
 昼寝のせいだろうか、夜はなかなか寝ようとしない。「遊んで」というよりは「揉んで」と訴えてくる。口にお気に入りのボールをくわえて(あ)の足の間に背中を向けて座る。揉んでもらっているうちに、ゴロリと横になりボールをくわえたまま目を細める。ルーシーのうらやましいくらいお気楽な生活に大きな変化はないけれど、少し大人になったかなと思うのは、トイレの回数が非常に減ったことである。
 寝る前にトイレシーツにNo.1をさせようとしても、まず指示に従うことはない。失敗したからと怒ったことも、トイレでイヤな思いはさせたこともないはずだが、まず家の中では用を足さなくなった。そして「ないもん」と言いたい時は、自分で寝場所へ行ってしまう。以前は就寝後、深夜近くになって「クレートから出して」と(た)に訴えていたようだが、それもなくなって朝まで寝てしまうことが多くなった。
 大人になった今でも朝は寝ぼけている。物音には反応して起きあがるけれど、明らかに頭の中は寝ている。ルーシーが本当に目が覚めるのは、Tシャツを着せられるときである。こちらが「寝ぼけているうちに着せてしまえ」と用意していると、敏感に動きを察知して廊下を小走りで逃げる。(た)にTシャツの丸首部分に頭を通されると、なぜか(あ)のところに逃げてくる。しかし、毎回(あ)に腕を袖に通されるんだけど。やっぱ寝ぼけているのかしら?