フライボール?

 今日のシツケ教室は、いつもの家庭犬試験の内容となぜかフライボール。本当は、もう一つ上のクラスのカリキュラムらしいんだけど、教室のレイアウトをフライボール用に組んでいたから、先生も「初歩の部分をやってみよう」と思ったらしい。
 フライボールとは、犬がスタートラインからダッシュして、ハードルを越えて先にある台にタッチしたら、ボールが台から外れる。そして犬はボールをくわえて、ハードルを越えてスタートラインに戻る。複数のワンちゃんが1つのチームを組んで、順番にボールを持ってくる。時間内にどれだけ多くのボールを持ってこられるかを競うチーム競技だ。
 テレビでは何度か見たことがあるけれど、これは非常に高度な能力が要求される競技だ。チームでの競技だから、周囲にはワンちゃんがいっぱい。まずは、周囲の雑音や刺激に惑わされず、競技と飼い主の指示に集中しなければならない。動くボールを追いかけるならともかく、固定されたボールに向かってダッシュしなければならない。そして、ボールをくわえてスタートラインで待つ飼い主の元に一目散に走る。時間制限のある競技だから時間のロスを出さないように、一匹のワンちゃんがゴールした瞬間に、次のワンちゃんがスタートを切らないといけない。つまり誇らしげにボールをくわえたワンちゃんとすれ違っても、自分は知らん顔で自分のボールを取りにスタートしなければならない。シツケの行き届いたボール遊びが大好きなワンちゃんでも、クリアしなければならないことは多いのだ。
 ルーシーがフライボールをすることは、ヘレン・ケラーグランドスラムを達成するよりも難しい。スタートラインに立った時点で、他のワンちゃんが気になる。ハードルが怖いので、いきなりコースアウト。自分の位置から離れていくボールは追いかけるけれど、固定した位置にあるボールにはまず気が付かない。大体、基本的にボールに全く興味がないし、よしんばボールを捕まえてもその場で囓ってしまう。飼い主の指示には従わない。まず飼い主の手元に持ってくる訳がないのだ。次のワンちゃんが、やる気マンマンで興奮のあまり吠えたら、逆ギレしてそちらに突撃しかねない。どうして、こんなヤツにフライボールなんかできるだろうか(いや、できない)。いきなりガックリくる(あ)をよそに、授業は進む。
 まずは、ハードルを越えてコースの向こう側に走ることを覚えさせる。スタートラインとフライボールの機械の場所に人間が立って、順番に犬を呼び合う。今回の授業では、ハードル以外の場所は通れないようにブロックが設置されていたので、ルーシーもそこを飛ばざるをえない。この状況では、予想外にルーシーもハードルを跳べた。ところが何回かコースを往復をしていたら、隣のコースが気になり始めた。その理由は簡単。U先生がいたからだ。
 ルーシーには飼い主2人がついていたが、他のワンちゃんは1人だけだ。従ってU先生がコースの一方の端に立ち、それぞれのワンちゃんを呼び、ハードルを跳んできたら褒めてやっていた。子犬の頃からお世話になっていたU先生が、隣のコースで「そう、良い子!」と高い声で他のワンちゃんを褒めるのが耳に入ったらしい。ルーシーが黙っていられる訳がない。一つ目のハードルを跳んだ時点で脱線、コースアウトしてU先生に駆け寄ろうとする。・・・あ、やっぱりね(涙)。
 他のワンちゃん達はレトリーバーで、服従姿勢も身に付いているしボール遊びも大好き。早くもご褒美ではなく、コースの両端でボールを転がして、ワンちゃん達はそれに向かって走っていた。同じチームのレトリーちゃんもボールをくわえて、優美に走る姿を見せていた。これが本当の競技なら、ルーシーは確実に足を引っ張ってしまうだろう。今日はここまでだったけど、最初の時点からルーシーは失格だな。だってボールに全く興味がないんだもん。
 それにしても、このクラス。落第の制度がないからルーシーもこのクラスに入っているけど、コイツにはレベルが高すぎるんじゃないかな?ルーシーも褒められることが減って、やる気を失わなければ良いのだけど。