セルフ・ウォッシュ初体験

 ルーシーはシャンプーが大嫌いである。正確にいえば、シャンプーだけでなくドライヤーも大嫌いである。逃げ道を封じて風呂場に押し込むと観念しておとなしくなるが、シャンプー後、洗面所に出した途端に暴れ出す。以前、洗面所の床に新聞紙を敷いておいたら、ビリビリに破いて八つ当たりをしていた。
 シャンプーの作業自体は他のワンちゃんと大差ないかもしれないが、我が家のドライヤーは人間用なので弱く、ルーシーの体を完全に乾かすのが難しい。ルーシーの毛は二層構造なので、トップコートが乾いたとしてもアンダーコートが湿ったままということも多い。それなのに、ルーシーは音が怖いのか、温風が嫌なのか分からないけれど、狭い洗面所の中をグルグル回りながらドライヤーから逃げようとする。こちらは終始、中腰で働かざるを得ないし、トップコートを乾かすだけでへとへとになる。(た)も(あ)も腰痛持ちなので、シャンプー時期が近くなると憂鬱になる。
 今日はセルフ・ウォッシュを体験することにした。ホームセンターの施設や機具を使わせてもらうのだ。30分500円で時間を延長すると追加料金がかかる。それでも我が家の場合には、お得に感じた。
 予約の電話を入れると「部屋の種類はどうしましょうか?」と訊かれた。小型犬用と大型犬用の部屋があるらしい。小型犬用の部屋には、浴槽とトリミング台がある。大型犬の場合には、地面に犬を立たせて洗い、乾かすことになるそうだ。小型犬用の部屋は、シェルティくらいの体格のワンちゃんまでなら使用可能ということなので、ルーシーもそちらで大丈夫ではないかという。また「初めてだから慣れないし、30分では難しいかしら?」と言ったら、45分という設定で予約することも可能だという。
 持っていく物は、シャンプーやリンス、タオル、ブラシ。完全に乾かないことも考えて、Tシャツも持参した。カウンターで書類を記入して、使用にあたって基本的な注意事項を確認し、部屋に入る。
 簀の子を敷いた浴槽に入ると、ルーシーは当初比較的おとなしかったが、それでも退屈してくると(あ)の胸元に足をかけてよじ登ろうとする。やっぱり体を固定する必要があるから、ルーシーの場合は二人がかりの方が良いかも。浴槽にはリードを引っかけるバーも付属しているけれど、体の方向を変えるのが大変だからなぁ。浴槽には栓をすることもできるから、ワンちゃんによってはお風呂を楽しむことができるようだ。
 シャンプー後、トリミング台に乗せてタオルドライした後、業務用のドライヤーを使う。ただし送風口にお尻を向けさせると、予想どおり、ルーシーは怖がってお尻を下げてしまう。「ええい、往生際の悪いヤツめ。キリキリ観念せい」と言い聞かせても無駄だ。仕方がないので犬ガムで気を逸らそうとするが、相手も必死なので、ものすごい速さで食べてしまう。あっという間に3本完食。もっと持ってくれば良かったかな。部屋に窓は付いているが、開閉できない仕組みなので、湯気が充満して暑い。夏はちょっと使えそうもないな。また顔にアンダーコートの抜け毛が飛んでくる。うー、顔が痒い〜!
 使用後は、浴槽を洗い流し排水口の抜け毛を取る。白いタイル壁の上の方まで、飛び散ったアンダーコートがくっついていた。シャワーを使って洗い流す。全く無駄毛ボーなんだから!(あ)は抜け毛の多さに改めて驚き、本当に自宅でやらなくて良かったと思った。
 密閉した空間で犬洗いをしたせいか、自分の体もなんだか犬クサイ。デート前の女性にはお勧めできないけれど、中腰姿勢が辛い人間には作業が楽だし、後片づけも簡単だ。料金は45分で750円。少なくとも家を汚したくない時や冬の時期には、有効だと思った。