バックとまわれ

 二回目のシツケ教室。一週間でバックができるようにと練習してきたけれど、依然なかなか難しい。問題は3つ。
 一つは、自分が見えない後ろに下がるのが怖いので、お尻が下がってしまう。二つ目は、「バウ」と混同して「バック」の「バ」を聞いた途端に、お辞儀をしてしまう。三つは真っ直ぐ後ろに下がれず、どうしても左方向に曲がってしまう。
 とりあえず一週間の成果を先生に見ていただく。はじめは先生の指示どおり、手にフードを持ち鼻面に付けるようにして、「バック」とコマンドを出してきたが、一週間を経てハンドシグナルと言葉のコマンドに切り替えてきた。このまま続けていたら「バック=押し相撲」と理解してしまいそうだし、顔を上げて後ろに下がって欲しかったからだ。上手くはできないけれど、ルーシーは少なくとも「バック=後ろに下がること」だと理解できたように思う。
 ただし「バック」の指示に従って、ある程度の距離を離れると、こちらが「グッド」と言っているのに「バウ」や「ターン」をしてしまう。ルーシーは、こちらが指示を出すと「アウ」「フフ?」とか変な返事(文句?)をする癖があるので、こちらの声が耳に入らず、自分のやったことが正しいのか間違っているのか、不安になるらしい。要するに落ち着きの問題なんだけど。先生の指示で、一回のバックが上手くいったら「グッド」と褒めながら、ルーシーに近づいて褒めるようにする。
 真っ直ぐ後ろに下がる練習として、先生がフェンスを使って細い通路を作って下さった。(あ)は通路の一方の端に立ち、ルーシーを下がらせる。頭は上がり、余計なターンはできない。通路の向こう側まで下がれたら、通路の幅を広げていくそうだ。「バックができるようになると、ダンスの幅が広がります」と先生。
 次に、新たに「まわれ」を習う。ルーシーは「スピン」「ターン」で両方向に一回転ができるが、「まわれ」は半回転だ。この教室には「ターンバック」という合わせ技がある。バックで車庫入れする要領で、犬が半回転をして、お尻からハンドラーの股の間を抜ける。「まわれ」は、その前半部分。ルーシーの場合、同じコマンドを使ってしまっているから「まわれ」とした。
 ターゲットハンドで動きを示しながら「まわれ」と声でコマンドを出し、ルーシーがこちらにお尻を向けたところで腰に手を添える。どうしても一回転してしまうのだ。体で覚えてしまったことは、頭を使わなくても体が自然に動いてしまうらしい。
 (あ)が腰を触るたび、ルーシーは「なんで?」と顔を見上げていた。手に持ったフードにばかり気をとられ、言葉のコマンドを聞いておらず、ターゲットハンドの指示しか見ていないから、ルーシーにとっては「ターン」と同じなのだ。自分は「ターン」の指示に従っているのに「なんで一回転したらいけないの?」と不思議がっていた。
 半回転の動きを覚えさせるために「まわれ→バック」の連続技を少し教えてみた。もちろん授業中にはマスターできなかったけど、後で(た)が「連続技で教えると『まわれ』のコマンドを出しただけでも、『バック』もするようになるよ」と言う。
 うーん、犬に何かを教えるって本当に難しい!!