正しい散歩の方法とは〜Cesar’s Way

 シーザー・ミランによれば、犬にとって医食住以外に必要なものは「運動・シツケ・愛情」なのだそうだ。そして彼はよく"in that order(この順番で)"と付け加える。なぜ運動がシツケや愛情よりも重要なのか?そこが知りたくて、(あ)は番組を見るだけでなく、彼の著書、Cesar's Wayを読むことにしたのだ。
 端的にいえば「犬が生まれつき持っているニーズの順番だから」ということらしい。アメリカでも三つとも飼い犬に与えている人はいるけれど、愛情を最優先することが多い。そうすると、犬の精神的な均衡が崩れるのだと彼は指摘する。
 運動の中で一番重要なのは、飼い主との散歩だそうだ。散歩は飼い主と飼い犬の関係構築の基礎であり、生理的に必要な運動ができるだけでなく、犬が犬であることを学び、周囲の環境について学び、その環境の中にいる人間や他の動物について学び、避けなければならない危険(車やスケートボード、自転車など)について学ぶことができる。だから、家の裏庭に放して自由に走らせることは彼が勧める運動ではない。エネルギーを燃やすためなら、犬用ウォーキング・マシンを使う方法もある。しかし、犬の運動をそれだけに限定するのは間違いで、飼い主と歩くことが必要だという。
 なお、散歩にも正しい散歩の仕方があるそうだ。

シーザー・ミランが勧める「正しい散歩」

  1. 散歩は毎日最低2回。一回につき最低でも30分をかける
  2. リードはシンプルで短いものが良い(長いリードやフレキシブルなリードよりも)
  3. リードはカラーと頭のてっぺん(裏?)の部分でつなぐ(特に攻撃性のあるワンちゃん)
  4. リードは犬が落ち着いて従順な状態で着用させる
  5. 犬が落ち着いて従順な状態であることを確認し玄関や門を出る
  6. 玄関や門を出る時は必ず飼い主が先に出る
  7. 散歩中、犬は飼い主の横か後ろにつける
  8. 飼い主は「自分がリーダーだ」という気概を持って(クレオパトラになりきって)姿勢良く胸を張って歩く
  9. 歩くリズムができ数分歩いたら、リードを少しだけ緩め、犬が自分の前に出ることを許す
  10. 飼い主の許可の下で、犬に用を足させ周囲のニオイを嗅がせる
  11. 必要な運動量が多い犬種の場合には、散歩中にバックパック(エネルギーのレベルにもよるが、大体は体重の10〜20%の重りを入れる)を担がせて負荷を与える

 以上のことを注意して(あ)はルーシーに対して、二回の散歩で試してみることにした。1回目は舗装道路、2回目は山道である。2回やってみれば、効果はある程度計れるだろう。
 1回目は予想以上の効果があった。もちろんルーシーは「いつもと違うぞ」と敏感に感じ取って警戒し、「ここは良い子にしていた方が良さそうだ」と考え、いつもと違って従順になっていたとは思うけれど。
 ルーシーは元来リードを引っ張る癖があるばかりか、最近では小学校の前にある並木まで来ると、しつこく周囲のニオイを嗅ぐようになっていた。こちらが排泄を促しても「ここだ」という場所が決まるまで時間がかかる。また「ここだ」という場所が決まっても、しゃがんだまま右を向いたり左を見たり、果ては「やっぱ、違った」と勝手に別の場所へ移動してしまう。今回、リーダーズ・ウォークを徹底して歩き、場所を選んで「OK」と声をかけた後で、ルーシーに排泄を促すと、比較的かかる時間は少なかった。
 2回目は残念ながら前回ほどの効果はなかった。ルーシーの警戒感が薄れたことと、山道のそこここに落ちている様々なニオイがルーシーの本能を刺激したせいだろう。「あそこのニオイを嗅ぎたい」とルーシーは頻繁にリードを引っ張るが、我慢してリーダーズ・ウォーク。(あ)がクレオパトラのオーラを出しても、全く効果はなし。それでも排泄は非常にスムーズだった。
 こうやってみると、今までの自分の散歩について、いろんな事に気が付く。一つ目は自分の視線が常に下がっていて、ルーシーの様子ばかり監視していたこと。二つ目は、ルーシーに喋りすぎていたこと。三つ目は、ルーシーを自由にさせ過ぎていたこと。
 35匹もの犬を連れた約4時間の散歩で、ミラン氏が犬たちを自分の前に出させる時間は、わずかに5分だという。5分の間に35匹が排泄や周囲のニオイを嗅ぐなど、生理的な欲求を満たす。「その程度の自由で良いのだ」と氏は語る。
 お父さん、クレオパトラでなかったら、ジョン・ウェインでも良いそうだよ。