鏡の国のルーシー2〜”How Dogs Think”

 本を読んでいたら「あっ」と思うことがあったので書く。以前(あ)がルーシーを相手に実験したことで、自分の考えは全くもって的はずれだったことが分かったのだ。2006年5月12日の鏡像認識の実験で、ルーシーに鏡を見せ、映った姿を自分であるかどうかを認識できるかを確かめた。この時、ルーシーは鏡に映った像が何者かを始めこそ確かめようとはしたが、最終的には怖がって全く鏡を見ようとしなくなった。
 Stanley Corenの"How Dogs Think"を読んでいたら−−これが話の本筋ではないのだが−−異なる動物を対象とした自己認識の実験が紹介されていた。動物に鏡を見せた後、麻酔をかけて眠らせ、その間に耳や眉毛を赤く塗る。麻酔が覚めて起きた時に、動物が鏡を見て、どのような行動をとるかを見たそうだ。自己認識ができる動物は、鏡の中の自分を一生懸命に見て、特に赤く塗られた場所を触り、寝ていた間に自分に何が起こったのかを確認しようとするらしい。
 この実験で、鏡に映った像が自分だと認識できたのは、チンパンジー、オランウータン、ゴリラ、イルカだったそうだ。犬やその他の動物は、鏡に映った自分の像を他の動物と認識するか、全く無視するかのいずれかだった。だから研究者の間では、犬は自己認識ができない動物と結論づけられている向きがあるという。
 一方、ある研究者は、この結果は犬が人間やサルの仲間よりも、目に見えることに影響されにくいからではないかと考えた。犬にとって最も重要な感覚は嗅覚だから、視覚的な実験で自己認識能力を試すことはおかしい。という訳で、この研究者は自分のペット、ジェスロで別の実験をすることにした。「黄色い雪テスト」である。
 この実験では、散歩中ジェスロに雪の上でNo.1をさせ、気づかれないように、それを採取して持ち歩く。散歩のルートで他の犬が用を足した雪も採取し、ジェスロが見ていないことを確認した上で、ルートの先で全く何もない綺麗な雪の上に、採取した「黄色い雪」を置き、ジェスロがどのような反応をするかを確かめる。
 予想どおり、他の犬が用を足した場所では、ジェスロはニオイを嗅いで上からNo.1をした。一方、自分の「黄色い雪」に出会った時は、ニオイを嗅ぐ時間は短く何事もせずに通り過ぎたという。従って、犬には人間に似た自己認識能力が、ある程度はあるのではないかという。
 また、自分のテリトリー、自分の寝床、自分の骨を認識できるのだから、犬の頭には、"mine-ness(自分の所有物)"というコンセプトがあるのではないか。
 この研究者の考えによれば、ルーシーの反応は至極当然ということになる。当時「コイツの頭の中身は成長してないなぁ」と思ったのは、的はずれということらしい。ルーシー、バカにしてごめんね。
 
http://d.hatena.ne.jp/lucy0414/20060512 鏡の国のルーシー1