なんだかなぁ

 昨日の夕方、公園でルーシーを相手に紐付きボールを使って遊んでいると、そこへ小学生高学年らしき男女4人がやってきた。なぜか男の子は「ルーシーと一緒に走りたい」と言い出し、紐付きボールを貸して欲しいという。
 紐付きボールを2,3回投げたところで、男の子の投げたボールは側の木に引っかかってしまった。立木は非常に背が高く、ボールは上の方の枝に。ハチ君のお母さんが見てくれたところでは、ヒモは枝の周囲をグルリと一周しているという。木を揺すったところで簡単には落ちて来そうもないし、また枝づたいに登るなどとは危険極まりない。棒で取る方法が一番現実的に思えたが、それほど長い棒が公園に落ちているはずもない。(あ)は、ボールのことはあきらめようと決めた。
 一方、小学生たちは子供なりに知恵を絞っていた。ある者は木の幹を蹴り、ある者は石を当てて取ろうと考えたのか、周囲で小石を探していた。悪いという気持ちはあったと思うのだ。自分たちでなんとかしようと考えているのは、その現れだと思う。
 ただし誰一人として、まず「ごめんなさい」と謝りに来る者がいなかった。女の子は、ボールを投げた男の子に向かって「木に引っかけたのはアンタでしょ?なんで私までこんなことをしないといけないのよ」と、文句を言い出す始末。放っておいたら、危険なのに木に登ろうとするかもしれない。注意はしておいた方が良さそうだ。ハチ君のお母さんが(あ)の気持ちを察して小学生に声をかけてくれた。
 「危ないから登るのは止めてね。それよりまず、やらなくちゃいけないことがあるでしょ?」
 ボールを投げた男の子は独りでブツブツ「弁償・・・」とつぶやいた。
 「そうじゃないよ。言わなくちゃいけないことがあるでしょ?」
 ルーシーが人の手に歯を当てたら、(あ)は、自分がルーシーに向かって「ゴメンナサイは?」と言わせることを思い出した。この子達は、ルーシーのレベルなんだろうか?
 「あ、ごめんなさい」ボールを投げた男の子が一応謝った。ハチ君のお母さんが「『あ』は要らない!」。
 なんだかバカバカしくなってきた。小学生高学年にもなって、自分のやったことを反省し素直に謝れないのかしら?(あ)は、この時、仕事で精神的に疲れ切った状態だったので小学生の態度に呆れる一方で、どう結末をつけるべきなのかに困ってしまった。もうルーシーは、あのボールでは遊べないだろう。それは良い。あきらめたから。だけど、このまま小学生を帰したら、また同じ事をするんじゃないだろうか?
 (あ)は男の子に近づき、話しかけた。
 「ボールのことは、もう良いよ。木に登るのは危険だから、絶対に止めてね。」
 「だけどね、なんでまず謝りに来てくれなかったの?そのことが私には一番哀しいよ。他人の物を借りておいて使えなくしたってことは、キミが自分の物と同じくらい大切にボールを扱っていなかったってことでしょ?まずは、そのことを謝るべきじゃないの?他人の物を自分の物と同じくらい大切に扱えないなら、他人の物を借りちゃダメだよ。」
 「お父さんに言わなくても良い。お母さんに言わなくても良い。だけど、きちんと相手に謝ることから始めないとダメだよ。」
 ボールを投げた男の子は立場的に弱い。怖いおばさんに怒られるままで、小さな声で「ハイ、ハイ」とうなづいていた。他の子供達は「自分たちは関係ない」と思っているのか、知らん顔で草むらを蹴ったりしていた。今日の小学生って、犬みたいだなぁ。
 その場を後にしたところで、クサクサした気分は変わらなかった。大体、子供に説教するなんてガラじゃない訳だし。
ヤレヤレ。