ペンギンと犬

 長きにわたり酪農家は、犬を使って羊や鶏、山羊を保護してきた。オーストラリア南部の島では、ある酪農家が犬を使って絶滅の危機に瀕するペンギンを保護しているという。
 毎年、フェアリー・ペンギンは繁殖のためにミドル・アイランドにやってくる。ある酪農家は、高速道路の側の農場でニワトリを放し飼いにしているが、引き潮の時にキツネが本島から島へ渡るのを目撃していた。酪農家のニワトリだけでなく、フェアリー・ペンギンもエサにしようとしているらしい。「多少塩味が効いているから、キツネにとっては乙な味なんだろうさ」
 キツネたちはペンギンの卵や幼鳥を狙い始め、コロニーをほぼ全滅しかけた。また、これまでにキツネ狩り等を行ってきたが、失敗に終わっていた。ペンギンが50匹前後の数にまで減るまで、長くはかからなかったという。
 この酪農家は、自分のニワトリとペンギンを守るため、最終兵器(オッドボールという雄犬)を使うことにした。当初、専門家達は「犬がペンギンをエサにしてしまうよ」と一笑に付していたが、犬を使うようになってキツネの姿はどこにも見られなくなったという。「犬から1マイル半は近づかないよ。姿を見られたら吠えられるし、犬はテリトリーを主張するからね」
 オッドボールや妹や弟犬も導入したところ、島にキツネの足跡は全く見られなくなった。ただし犬を島から引き上げさせると、キツネが戻ってくる。酪農家は絶滅の危機に瀕した他の動物の保護にも、犬を使うことを考えてはどうかと提案している。
 一方、保護を受けているペンギンに感謝している様子はないらしい。犬がペンギンに近づきすぎれば、鋭いクチバシで突かれる。「ペンギンは素早く振り向いて、鼻先を突くんだよ。」