方向転換

 土曜日のシツケ教室で、ルーシーの反抗的な態度について、A先生にもう一度相談する。結論から言えば、やはり矯正が必要とのこと。実際にルーシーを仰向け抱っこしたところ、目の前で見ておられた先生は「(ルーシーは)ものすごく体に力が入っていますね」と驚かれていた。後ろ足は肉球をぎゅっと縮めているし、尻尾は完全に股の間に入り、外側からは尻尾がないように見える。こんなルーシーをリラックスした状態に持っていくのは、至難の業だと理解していただけた。
 これまで、いろいろな方に相談しアドバイスを仰いできたが、訓練士やドッグ・トレーナーのご意見と飼い主さん達の意見とは、大きく異なる。ルーシーは反抗的な態度をとるにしろ、それは飼い主2人だけに向けられるものであって、他の方やワンちゃんに自分から攻撃を仕掛けることはない。犬同士のつきあいについては、ルーシーなりに、きちんとルールを守っている。そういう意味では、飼い主2人はルーシーを信用しているし、だからこそ公園で他のワンちゃんとも遊ばせられる。
 それでも相手がやはり人間ではないことを、いつも頭に置いておかなければならない。「何があるか分からないですし、何かが起こった後では遅すぎます」と先生は仰る。また先生は、同僚の方のお話を例に出された。飼い主に対する依存度が非常に高く従順なワンちゃんだったのに、ある日突然、他のワンちゃんを見ると攻撃するようになってしまったそうだ。もちろん矯正を入れて訓練もしておられるそうだが、なぜそうなってしまったのかは全く分からないという。犬の専門家であっても「まさか」ということが起こる。(あ)のようなヘッポコ飼い主では「まさか」の時のハンドリングは難しい。ここは真剣に矯正に取り組まざるを得ない。
 先生にモー姉のやり方を説明し、とりあえず、その矯正方法を続けることにした。「始めは唸って抵抗するでしょうが、その時間が少しずつ短くなっていくはずです」と先生。ただし矯正練習の後は、フォローが必要だ。嫌な印象だけで終わっては、いつまで経っても態度は改まらないという。また、先生は「一見、虐待のように見えるかもしれませんが、これはシツケですから」と、こちらの心理にも気を遣って下さった。こちらも方向を転換しないといけないと、心に決めた。
 さてドッグダンスの方も、大きく方向転換。思い切って、先生に曲目を変える提案をした。
 正直なところ"Pacifica"は、ルーシーが踊るにはテンポが少し速いのと、新しい技が連続するため一つを間違えると全体がズレてしまう。一度ズレるとリカバリーをする余裕がない。非常にオタついてしまう。また後半の盛り上がりの部分で、タイミングが取りにくい。それに少々曲調が暗い。この曲を選んだとき、曲全体の長さばかりを重視していたので、実際にルーシーが動くスピードまで理解していなかった。実際に踊ってみて、ルーシーは(あ)が思うほど速く動かない(動けない?)ことが分かったのだ。
 そこでパヴァロッティ先生にご登場いただいた。曲目は"funiculi funicula(フニクリ・フニクラ)"である。長さは2分44秒。"Pacifica"よりも踊っている時間は1分ほど長いけれど、テンポはかなり余裕があるし、何しろ曲調が明るい!初めて聞いた時、ルーシーも大笑いしていたし(気に入ったのかナ?)。ワガママばかり言うからとたたき台を作っていき、先生に修正を入れていただく。
 しかし、先生が作って下さった"Pacifica"はともかく、(あ)の作った"funiculi funicula"はダンスというよりもラジオ体操に近い。先生は「"Pacifica"は貴女に合った選曲で、"funiculi funicula"はルーシーに合わせた選曲ですね」と笑っておられた。
 確かに。パヴァロッティ先生の歌というよりも、私らのは「鬼〜のパンツは良いパンツ〜」だもん。