アプローチ

 新しい課題曲が決まり振付のたたき台をいただいて2週間。(あ)は、今回どう完成まで進めていくかを考えていた。
 前回は、ルーシーができる技があまりにも少なかったため、振付を考えながら新技を覚えるという方式だった。曲の最初の部分から振付を作っていくことになったため、ルーシーは飽きてしまい、途中、手を抜くようになった。
 例えば「お座り→伏せ」を2回繰り返す部分では、伏せの前足が浮き上がったままになる。自分のタイミングではなく曲のテンポに合わせるため、ルーシーも焦っていたのかもしれない。しかし以前はきちんとできていたことが、後になってなおざりになる。そして、なおざりになったものを、以前どおりにさせるのは、意外に大変だった。
 それに余裕がないのは、ルーシーだけではない。(あ)自身がアップアップしていた。余裕がない状態では、ルーシーを褒めながら褒美を与え、次の動作を考え、自分も踊るなど、とても無理だ。次の課題曲は、前回のものよりもノリが良い。リズムに乗らないといけないのだ。ところが、いつも頭の中は真っ白で全身が硬直している。そんな自分に腹立たしさを感じているところに、重ねて(た)に「アンタも楽しそうに踊らんと」と言われ、「そんなん、できるんやったら、とっくの昔にしとるがな!!」と本気でブチ切れてしまった。
 余裕がない(あ)の姿をつぶさにご覧になり、A先生も理解してくださった。今回はひとつひとつの技をきちんとできるかどうかを確認してから、音楽に合わせることにした。ただし、同じ犬でもひとつの動作と別の動作の速度が違うこともあるから、音楽は流しっぱなしにする。動作の速度が、曲のテンポに比べて、あまりにも速すぎる、遅すぎるという場合には、振付を変更しなければならないからだ。
 また曲の内容を構成と拍数で分解し、チャートを作成した。ちなみに新しい課題曲は、ジェー○ズ・ブラウンの"I Got You (I Feel Good)"という曲で、"So good, so good, I got you"という部分が繰り返されるのだが、部分によっては拍数が他よりも少ないところもある。RBの王様は、部分によって、フィーリングで6拍で歌ってしまうので、同じ振付を当てはめることができない。余裕のないfunkyなダンスなぞ、ありえない。
 理屈ばかり書いてしまったが、新技の練習成果をご報告。サイドウェイ・ウォーク(カニ、オシリ)は、随分と良くなってきた。特にカニ(左方向への移動)は、ツイテの位置から離れてしまうことがあるので要注意だけれど。ベッグ(もといちんちん)も、後ろ足で立ち上がらないようになってきた。ただし、頭上にあるフードを食べようと首を伸ばすのでスッポンみたいだけど。先生はルーシーの「すっぽん・ベッグ」をご覧になって大笑い。よほどウケたらしく、ルーク君のお母さんとお姉ちゃんを見つけて「見て、見て、ルーシーのベッグ、すっぽんみたい」と声をかけていた。 
 先生に「ジャンプは、どうですか?」と訊かれ返答に困る。実は他の技ほど練習していないのだ。ルーシーのジャンプは、ボーダーらしいキビキビしたものではない。理由は2つ。一つ目は、ルーシーの足のことを考え、練習は屋外の土の上だけに限っているので、雨が降ると練習ができないこと。二つ目は、ルーシーがフードしか見ていないので、よく後ろ足が(あ)の足に激突してしまうから(おかげで、こっちも青アザだらけ)。という訳で、ルーシーのジャンプは全くやる気のない「どったん・ジャンプ」のままだ。
 先生にジャンプの見本を見せていただく。そーなんだよなぁ。それくらい飛ばないと、ジャンプに見えないわなぁ。やっぱり、こっちがやる気を出さないと。何事もアプローチが肝心。うむ。