3週間ぶりのシツケ教室。ところがルーシーは最初からウダウダ〜。少し涼しくなったのと、授業の時間を2時間ほど遅らせてもらったことで、少しはやる気を出してくれるかと思ったんだけどなぁ。
 (あ)は、この展開をある程度は想定していたので、この日、新しいおやつを持参していた。本格的な夏を迎えるまでは、ビ○ジャックのレバートリーツを使っていた。人間が嗅ぐと思わずのけぞる強烈なニオイを発し、ルーシーの目の色が変わる代物なのだが、味が濃いらしく、やたらと水を飲む。それに、この商品はなぜか消費期限が書いていない。低圧で加工しており熱を加えていないとのこと。1回の授業では使い切れないので、夏場は使用を控えていた。新しく導入したのは、その名も"Training Reward"である。100gのパッケージで1,050円と少々お高いのが玉にキズ。開けてみると高級ソーセージの香り。あ、これは人間が食べても美味いかも。クレートに控えていた青空ちゃんまでガサゴソ。
 それでも、なかなかルーシーのやる気が出ないので、切り札の青空ちゃんに登場してもらう。ルーシーにとっては、自分がもらえるはずのおやつを、確実にとられてしまう相手である。青空ちゃんはルーシーとは正反対の性格で、真面目で、やる気に満ちあふれ活動的、つまりはボーダーらしいボーダーだ。
 アラウンドの指示を出されると、ルーシーはテレテレと(あ)の周囲を回るだけだが、青空ちゃんは(あ)の足に体をすりつけるように、ハイスピードで回る。グルグルは、ルーシーの場合、一回一回「まだですか?」とこちらの顔を伺う。一方、青空ちゃんは、こちらが「グルグル」と言い続ける限り、下を向いたままグルグル回っている。あまりに高速なので、こちらの目が回りそうになる。「ちびくろさんぼ」で(今はpolitically incorrectということで別の題名になっているかもしれないが)、椰子の木に登ったさんぼを狙って、トラが木の下をグルグル回りバターになっちゃうのを思い出した。
 ルーシーのゴロンとロールは「あ、よっこいせ」と二段階だ。先生も「これは珍しいかも。エライ腹筋を使ってるって感じのゴロンですね。」と笑われた。最初に伏せの態勢をとらせているからかもしれない。
 青空ちゃんに得意のジャンプの指示を出すと、(あ)の膝の辺りを軽く飛んでしまう。さすが〜!!嬉しくなった(あ)が足を挙げて、ルーシーに「ジャンプ」と言うと、おやつを持った手の方に飛びついた。こんなとこでボケてどうする!先生が大笑いで「ルーシー、好きだわ〜」と仰ると、ルーシーは「へへへ、褒められちゃった。嬉しい〜!」と甘えていた。褒めてないっつーの!
 今後の練習の進め方を相談し、これまでにも何回か訊いたはずの質問を再度ぶつけてみた。どうやったら、やる気のないルーシーにやる気を出させることができるのか。この夏いろいろ試したが、根本的には変わっていない気がするのだ。
 「やる気のないワンちゃんにやる気を出させること、やる気があり過ぎるワンちゃんを抑えることは、私にとって永遠の課題だと思います。」と先生。「やる気を出させようと犬を褒めていたら、(他のトレーナーさんから)『なんで犬に媚びてんねん』と言われたことがあります。」
 確かに、犬に「これは自分がやらなきゃいけないこと」と思わせるのは重要だと思うけど、ルーシーに厳しくしても、ますますやる気を失わせるだけの気がするんだけど。先生の目から見て、私はルーシーに媚びてますか?
「ちょっと、ご褒美が多いかなと思います。」と、先生は授業中の一コマを例に挙げて説明してくれた。
 ルーシーは授業中に教室の隅で伏せて「私はやる気がありません」と意志を表明した。この時(あ)は、ルーシーを立ち上がらせ自分の元に来させただけで、ご褒美を与えていた。「この子は出来る子だから、フードは与えなくても良かったと思います。」また1回に与えるご褒美も多すぎるという。すぐにお腹が満足してしまって、やる気がなくなるのかもしれないと。
 「ご褒美を減らして、もっとハングリーにさせたらどうでしょう?」確かにダンス中に何回もフードを与えるのは大変だから、少ないご褒美で満足してくれれば一番なんだけど。ルーシーは元々ダンス自体が好きという訳ではないから、ご褒美を減らすことで、やる気を失うことはないんでしょうか?
 「そうですね〜。」と先生。「やる気が倍増するか、いじけるかのどっちかだと思います。」
 いじけた場合、ダンス自体がイヤになるのかなぁ。その事態が怖くて、ダンスに関してはルーシーを叱ることすら避けてきたんだけど。これまで単独技一つ一つに、ご褒美を与えていたところを、連続技にすることで、与える量を少しずつ減らしてきたつもりなんだけど、それでもまだ多いかなぁ。ダメモトで、もう少し減らしてみようか。
 「逆に、やる気があり過ぎるのも問題でね」と先生。先日の青空ちゃんのダンスについて話された。実は、このダンスはグループ用に作成されたので、テンポが青空ちゃん個人には遅すぎる。やる気満々の青空ちゃんは、思い切り走れるバック→ターンバックの箇所で、ついつい声が出てしまうらしい。そして青空ちゃんのテンポに合わせると、先生には速すぎるそうだ。そういや以前(あ)がターンを指示したら、青空ちゃんは、指示の間に二回もクルクルと回って見せた。ルーシーのテンポで指示を出したから、青空ちゃんには激遅だったらしい。
 アホな子にはアホな悩みがあるように、賢い子には解決がより難しい問題があるようだ。