Border Collie Chess

 Jon KatzDog Daysを読んでいた時(あ)は「あぁ、そうか」と思った。自分がなぜボーダーコリーが好きなのかが分かった気がしたからだ。
 ボーダーの飼い主さん達には、それぞれ経緯や理由がある。たとえば、フリスビーをしたい、羊を追わせたい、一緒に山登りをしたい、賢いから、ペットショップで目が合ってしまった等々。(あ)の場合、ボーダーコリーの姿を見ると自然と頬が緩み嬉しくなってしまうのに、なぜ飼いたいと思ったのか自分でも理由が分からなかった。
 ボーダーが他の犬種と違う点。それは「人間には理解できないこだわりを持っていること」ではないだろうか。そして、そのこだわり方が"obsession"(妄執、取り憑かれたようになること)と言われるほどシツコイ。人間とは種が違う訳だから、当然どんな犬種でも100%理解することはできないが、ボーダーコリーのこだわり方は普通ではない。持っている本能とエネルギーを全て投入するから、破壊に向けられた場合、その威力は凄まじく、最悪のケースでは問題行動と言われてしまう。その一方で、その「訳の分からんところ」がなんとも愛しいのである。
 本の中に、著者がIzzyというボーダーコリーと"border collie chess"をする様子が紹介されている。スゴイことのように聞こえるが、ボーダーを飼っている人なら、多かれ少なかれ体験していることだ。Izzyは、著者の元に来るまで人間とのつながりが希薄な環境で育ち、分離不安と脱走の傾向がある。

 **フェンスで囲まれた前庭を脱走**
 先手 Izzy ゲートの下にトンネルを掘って脱走
 後手 著者 大きな石をゲートに立てかけるようにして置き、出口を塞ぐ
 先手 Izzy 石を足場にして、ゲートを飛び越える
 後手 著者 くま手やシャベルをゲートの外に立てかけて、飛び越すスペースを塞ぐ
 先手 Izzy くま手やシャベルの間を縫って飛び越える+チェーン付きの掛け金を歯で開ける
 後手 著者 フェンスの柱に追加のフックを付ける

 **クレート破り**
 先手 著者 クレートに入れ外出
 後手 Izzy クレートを解体(鼻先で掛け金を外し、クレートの底にあるプラスチック製のトレイを押し出し破壊)の上、クレートや床に下痢
 先手 著者 45分車を運転して近郊の町へ行き、もっと強いクレートを購入
 後手 Izzy クレートをひっくり返し、隅を押し破って脱走 壁の塗料を剥がした上に、ラグを破る
 先手 著者 ネットで調べ、航空輸送に使用可能なトラベル用クレート(掛け金は全て外側で届かない場所に付けられている)を購入

 Izzyの場合「人間=エサの源」であり、人がいなくなるということはエサがもらえないことと考えていたようだ。著者が在宅の場合は、喜んでクレートに入り何時間も静かに過ごすことができるのに、不在となるとパニックを起こして破壊行動に出る。ボーダーコリーの破壊力は並ではない(個人的な見解だが、おそらく大型犬の破壊行動よりも凄まじく徹底していると思う。おチビのルーシーだって、(あ)を度々愕然とさせたくらいだ)
 Izzyの場合は、なんとなく理由が分かるが、理由が全く見えないことがある。そうした場合、飼い主は頭を抱えながら「一体どうして?何がいけないの?」とつぶやくことになる。そして残念ながら、自問自答して明確な回答を得られるケースは稀で、大抵の場合、相互理解の努力は徒労に終わる。
 ルーシーを飼って2年が経ち、悟りをひらくことになろうとは。それでもborder collie chessは笑える。そして、ますますボーダーコリーが愛しい。(あ、ウチのはタヌキだけどね。)


見返り美人