ボーダーコリーの将来

 先日、ピーママさんの計らいで、ボーダー飼いの大先輩であるAさんとオーストラリア人のブリーダーさんとお話させていただく機会を得た。
 Aさんは、最初のボーダーコリー(♀)をペットショップで購入したところ、性格も運動神経も素晴らしかったことから、その子に子供を産ませようと考えていた。残念ながら、股関節に問題があることが分かり、断念せざるを得なくなった。その一方でブリーディングや日本のペットビジネスについても知識を深め、ブリーディングに必要な施設を作り、必要な許可を取得して、ブリーダーとして「健康なボーダーコリーの育成」に本腰を入れて頑張っておられる。
 オーストラリア人のブリーダーさんは、既に30年以上ものキャリアを持ち、グランド・チャンピオン犬を何匹も育ててこられた。今回、横浜でのドッグショーに参加され、その足でAさんを訪ねられたそうだ。ブリーダー仲間が手がけた子犬が、Aさんのところにやって来る予定なので、代理で施設や生活環境をプロの目で確認されていた。
 今回Aさん宅の中も拝見したのだが、素人目で見ても、ブリーディングのために考え抜かれた間取設計になっていた。床は滑りにくいタイルを選び抜いて採用されたとのこと。タイルは衝撃を吸収しないから、骨や関節に負担がかかるのではないかと思われたが、ブリーダーさんの自宅もタイルにしておられるらしく「フローリングよりもタイルの方が良い」と仰っていた。
 次に運動について訊いてみた。ブリーダーさんは「自分は心配性なので」と前置きをされた上で、2歳まではフリスビーもボール遊びもさせないという。遺伝子のせいかどうかは別として、ボーダーコリーが股関節や足を痛めたケースの90パーセントは、運動のさせ方に問題があるのだという。2歳までは自由に走り回らせるのが一番で、そうでなければ自転車引きで走らせるようにすべきだという。ただし、彼女自身は土の上を自転車で引いているそうで、舗装道路は関節に良くないという。時間は1時間を目安としているとか。
 必要な運動を短時間で行うのは難しく、犬に付き合って同じだけ歩くのは、特に毎日となれば、体力的にも時間的にもキツイ。一方、ルーシーは運動不足になると、ヒマに任せて手を舐めすぎてハゲを作るなど、よからぬことをする。他のワンちゃんも尻尾の毛を噛み千切ってしまう子がいると聞いている。(あ)はズボラなので、どうしてもフリスビーやボール遊びに頼ってしまう。運動不足で、問題行動に出る子などはいないのだろうか?
 ブリーダーさんは、この質問に対して当惑した表情を見せた。「私個人は、そんな行動をする子に出会ったことがありません。」運動不足で問題行動を起こすなんて、おかしいことなのか?シーザー・ミランの番組では、ほとんどがこのケースなんだけどなぁ。犬の性格形成・性格決定の点でも、ブリーディングが大きな役割を果たしているということだろうか?
 話はオーストラリアのドッグショーに。日本とはシステムが全く違うらしい。一回の大会で獲得できる点数は最高で25点。タイトルを手に入れるためには、1,000点以上が必要になるそうだ。恐ろしく難関なのだなぁ。
 世界のボーダーコリーのトップは、現在、オーストラリアに集中しているらしい。という訳で、日本やアメリカ、中国からも、子犬を欲しいと引き合いが多数寄せられているそうだ。ただし、特にこのブリーダーさんは、自分が手がけた犬だけではなく、その子供達のことも心配しておられる。オーストラリアの行政、愛犬協会、ブリーダーが課す犬の売買に関する規制は、日本のそれに比べ、数段も厳しいようだ。愛犬協会は、ブリーダーから直接購入するように啓蒙活動を進めており、ペットショップで犬を買うことができなくさせるように行政に働きかけているという。ボーダーコリーのように遺伝性疾患の多い犬種では、そうなることが一番だと思う。
 オーストラリアで、これだけ厳しい規制が行われているのは、牧羊犬のニーズが高いからボーダーコリーを保護する意味で行われているのだろうか?ブリーダーさんは「私の手がけるボーダーコリーは主に家庭犬で、オビやアジに優れています。だから、牧羊犬ということではないと思います。私の犬を受け取る飼い主を裏切ったり、悲しませないようにすることは、ブリーダーの良心の問題です。」と仰った。日本でも、そうなってくれたら良いのだけれど・・・。
 今回ブログに紹介するにあたり、名前を完全に伏せさせていただいた。というのも、既にオーストラリア人のブリーダーさんには、依頼が殺到しているらしいからだ。以前、オーストラリアから一頭の雄犬を日本に入れたところ、遺伝子面に配慮せずに交配が行われ、子孫が、実際には股関節形成不全のキャリアなのにも関わらず、オーストラリア・チャンピオンの血筋だからというだけで多数、市場に出回ってしまった。こういうことは二度と起こってはならない。Aさんのブリーディングにかける情熱は、そういう気持ちも含まれているだろうから、こちらがブログで不用意に書くことで、お二人に迷惑がかかることは極力避けたい。という訳で、この件に関して、ご質問のある方は直接私までお願いします。