♂か♀か

 昨日書いたサイトで、面白かった話があったので紹介したい。質問者は「これからボーダーコリーを飼いたいのだけれど、♂か♀かどっちが良いのか?両方とも、長所と短所があることは知っているけれど。どっちが良いのだろう?」とコメントしている。以下は、その回答である。

 『ボーダーコリーを多数扱った経験がある者として、私がこれまでに得たことをお話したい。他のスタッフの意見は違うかもしれないが、皆、大筋で賛成してくれるものと思う(念を押すけれど、ここに書いてあることは絶対的な話ではなく、あくまで大筋だ。だからアナタのケースは違うかもしれないけれど)
 ボーダーコリーの性別における気質・傾向は、人間の場合と同じである(実際、人間よりも性別により全く別の気質や傾向を有しているといえるだろう)。
 ボーダーコリーの♀は気分屋で、愛情深い態度を見せたかと思うと、次の瞬間には怒っている。熱したり冷めたり、また熱したりと、一日、一週間の間にクルクルと態度が変わり、♀のボーダーコリーと一緒に暮らすのはミステリーと生活するようなものだ。次に何が起こるか、予想がつかない。オビの大会やハーディングのトライアルに参加する飼い主達の多くは、このような気質を忌々しく思っている。というのも、ある日はスィッチが入り素晴らしい出来を見せるが、別の日にはスィッチが切れて、訓練自体を全くやりたくないという態度をとるからだ。♀は深淵な内面を有していて、理解するのは厄介である。ちょっとしたことにもビクつき、心理ゲームを楽しむ傾向がある。♀の頭の中は非常に複雑だ。私は、人間の女性についても、♀のボーダーコリーについても、彼女たちの思考回路を読み解こうとしたことはない。私にとって、どちらも無駄な努力だからだ。
 ♂のボーダーコリーは、もっと頭がかたく、行動を予想しやすい。♂のボーダーコリーの頭の中を想像し、うまく付き合うのは難しくはない。一旦理解して扱い方が分かれば、実際彼らは非常に単純である。彼らの思考回路は「直流」型で安定している。♂のボーダーコリーがある日とった行動は、あまり変わることはない。♀のように、飛び抜けて良い出来を見せることはないかもしれないが、総じてレベルは高い。体操選手なら10点満点で、毎日コンスタントに9.7が出せる。一方、♀の場合は10点満点のこともあれば、8.4点のこともあり、その両方が一回の試技に見られる。
 ♂は押しが強く支配欲が強く、♀はもっとソフトである傾向が強い。♂は体を抱かれるのが好きだが、♀は、またたく間に愛玩犬から世捨て人に変貌することもある。♂の行動は♀よりも、もっと直接的で、飼い主の注目を得ようとする場合には、例えば、近づいて鼻先で軽くつついたりする。♀の場合は、別のやり方で気を引こうとする。たとえば、家具のキャスターを外したり、ゴミ箱からゴミを盗んだり。♂は体を使って目的を果たそうとするが、♀は頭を使う。
 保護されている問題犬の大半が♀だ。支配欲が問題の♂も多数いるが、♀の方が問題は非常に深刻だ。♀の飼い主は、自分の犬が天使と悪魔のどちらかだという(一匹の中に両方が共存するケースもあるが)。♂の飼い主は、ボーダーコリーらしい典型的な問題を抱えている。ボーダーコリーが子供に向かって唸ったり、前庭を狂ったように走り回たりすると連絡を受ければ、大抵の場合、その犬は♂である。カギのかかったフェンスで囲まれた庭から脱走し、トラックの配線を囓り、納屋の屋根に登ったきり下りてこようとしない(現実の話だ)等の連絡を受けた場合、大体♀である。複雑な思考回路は、ずっと複雑な問題を生み出すものだ。
 ここまで読んでお分かりだと思うが、私は断然♀が好きだ。現在ボーダーコリー4匹と暮らし全員♀だが、この暮らしを変えるつもりはない。どうしようもなくお手上げだとしても、男はチャレンジに惹かれるものなのだ。』

 ルーシーと出会った時、実際(あ)は最後まで迷っていた。♂の方が、単純で分かりやすいと思ったからだ。個人的には、ベタベタに甘えてくれるワンコが欲しかった。ただし♂の体格やパワーと、飼い主二人の衰える一方の体力を考えると、♀の方が良いと説得された。それに、このワンコを逃したら、次にボーダーに会えるのはいつになるか分からなかった。おかげで、否応なくチャレンジの日々に突入した訳だ。
 (あ)の場合、今や自分が幸せなのか、不幸になのか、よく分からなくなってしまった。考えすぎて疲れ果て、少々なげやりになってきている。