フードキャッチ

 ルーシーが苦手とすることは多々あるけれど、フードキャッチもそのひとつである。周囲の飼い主さん達は「ルーシーはフリスビーはキャッチするのにね」と慰めて下さる。フリスビーとフードじゃ、大きさが違うしねぇ。本人の目が悪いのか、集中力が足りないのか、反応が鈍いのか、投げる側がヘタなのか。おそらく、これら全てが原因なのだろう。
 鼻パクはともかく、フードキャッチは出来たら良いなと思う。ダンスで「バック→ターンバック」を練習する時でも、なかなかルーシーが(あ)から離れようとしないのは、おやつを早くもらいたいからだろうと思う。(あ)の手元にご褒美があると分かっているから、離れたくないのだ。フードキャッチができるのなら、ハンドラーから離れていたって、ご褒美をもらえる。思いっきり後ろに下がって、技の大きさやスピードをアピールできるのに。
 という訳で、このところフードキャッチの秘密特訓をしている。ヨダレで床が汚れるのがイヤなので、もっぱらルーシーをサークルの中に入れて、外からフードを投げる。食事用のフードでは集中力が高まらないかもしれないと、使用するのは試供品のフード。これをルーシーによく見せて、ポンポンと投げ入れて食べさせる。
 食べ物がもらえてキャッチができれば褒められるとなれば、ルーシーが嫌がるはずもなく、(あ)が「ルーシー、サークル」と言えば、駆け足でサークルに入るようになった。
 ところが、肝心のキャッチ率は依然低いままだ。
 ドッグトレーナーで幼なじみのモーちゃんのお姉さんに訊いたところ「もしかして、キャッチに失敗したフードを食べさせてませんか?」と言う。モー姉ちゃんに言わせると「犬は現金だから、失敗しても食べられるのなら本気にならない。失敗したら食べられないとなれば、ものすごく集中するはず」という。実際に、モーちゃんもそれでキャッチ率が上がったという。
 という訳で、秘密特訓の方法を変えた。相変わらずサークルで練習をするのだが、フードの数は10個と限定。キャッチに失敗してサークルの外に出たフードは(あ)が拾って回収する。ルーシーはサークルの柵から鼻面を出して、未練がましく落ちたフードを見つめているけれど、練習のためだからガマンガマン。
 この方法に変えて何回か練習したところ、サークルの外に出す数は少なくなってきた。ただし、一回でフードが口に入る確率は低いままだ。
 今日のルーシーは、瞬きをせずに片方の前足をちょっと地面から上げて、やる気満々である。ところが、2回も続けて失敗。やる気が空回りしているようだ。
 ここで(あ)がタイム。「ルーシー、それで良いの?大丈夫?」
 するとルーシーは「ハッ」とした表情になった。それまでは(あ)に一番近い場所に陣取って、手元を見つめていたのだが、なんとサークルの奥の隅にお尻をつける形で座って見せた。口の中に入らなくても、サークルの外には、フードを絶対に出さないぞという意気込みらしい(笑)。
 当初の皮算用では、集中力が上がってサークルでキャッチができるようになったら、床で練習して、失敗して落としたフードは回収するつもりだったんだけど。なんだか練習の初期段階で趣旨が変わってきてしまったような。
 ま、(あ)に命じられてやることで、ルーシー本人がやる気を出せることなんて、数える程のものだ。今は、これで練習しようかな。