強化トレーニング〜”DON’T SHOOT THE DOG!”

 (あ)は、ルーシーのシツケのことで悩んだり、不安になったりすると本を買う。3歳を超えて、それまでに発生した問題は根本から解決したものは一つもなく、なんとか改善されたものでも、問題の深刻さが5から2くらいになったくらいだ。全く改善の兆しがないものについては「どうして、この問題は改善しないんだろう?」、少し改善した問題については「今、改善しているように見えるけれど、このまま続けていれば良くなるのか?」と思う。疑問はいつも頭から消えることがなく、不安になりネットで注文しているうちに、本は着実に増えている。
 情けないことに、未だに苦手なのは「褒め方」と「叱り方」だ。特に「褒め方」には苦労している。ところが、本には肝心の方法について書かれているものは少ない。というのも、褒め方も叱り方もタイミングが命なのだ。そのことは、今まで読んだ本全てに書かれているが、詳しいところまでは書いてない。という訳で、頼りにするのは、先生ということになる。
 ルーシーに特定のトリックをさせると良く分かるのだが、(あ)の場合と先生の場合と、褒めるタイミングが微妙に違う。なお、ルーシーも先生に指示された場合の方が真剣に取り組んでいて、先生に褒められると動作の速度が速くなる。(あ)が褒めると、なぜかスピードが落ちて「ハイ、終わり〜。おやつチョーダイ」と舌なめずりをする。
 今回不安になって購入した本は、"DON'T SHOOT THE DOG!"という。(直訳すると「犬を撃つな!」。「オイオイ」とツッコミを入れた人。私は銃は持ってませんから。)著者はKaren Pryor、行動学者でイルカのトレーナー経験がある。また、さまざまな動物園で飼育員に対してシツケのアドバイスをしてきた。中にはパンダやラマ、人間さえも扱ったことがあるそうだ。この本では特に"Reinforcement training(強化トレーニング)"を取り上げている。
 強化トレーニングでは"reinforcer"を使う。"reinforcer"とは「ある行動に関連して起こるもので、同じ行動が再び起こる可能性を引き上げることができるもの」なのだそうだ。例えばトリーツや身体を撫でることや褒め言葉。"reinforcer"は、犬が喜ぶことばかりではない。叩かれたり、しかめ面をされたり、嫌な音がすることだって"reinforcer"である。犬を喜ばせて同じ行動をさせることを、"Positive Reinforcement(陽性強化)"また、犬に嫌な思いをさせて同じ行動を繰り返させないことを"Negative Reinforcement"という。
 この本では、理論だけでなく実際にどう対処するかを具体的に説明している。

 【問題例】一晩中、庭で犬が吠え続けること
アプローチ
1)犬を撃つ(だから、やりませんたら!):犬を撃つ、犬を売る、獣医に声帯を切除してもらう
2)罰:庭に出て、犬が吠えたら、犬を叩いたり、ホースで水をかける(ただし、犬は貴方に会えて嬉しいから、罰も甘んじて受けるかもしれない)
3)陽性でない強化:犬が吠えたら犬舎に強いライトを宛てる。犬が吠えるのを止めたら、ライトを消す
4)自然消滅を待つ:この行動は、吠えること自体が強化になっているので、自然に収まることはない
5)他の行動をさせる:「伏せ」のコマンドを出し、犬を伏せさせる。伏せた状態では吠えにくい。犬舎に向かって家の中から叫んだり、犬舎にインターコムを付けてコマンドを出す。伏せたら褒美を与える。
6)コマンド化する:犬にトレーニングを施して、コマンドに従って吠え、吠えたら食べ物のご褒美を与える。コマンドが出されない場合には、吠える意味がなくなる。
7)シェーピング:犬が夜10分、20分...と静かでいられたら、外に出て褒美を与える。
8)動機を変える:吠える犬は、寂しく、怖くて退屈している。犬が夜は疲れて眠くなるように、日中に充分に運動させ注目してやる。または、他の犬と一緒に寝かせる、犬を屋内に入れる。

 著者によれば、望ましくない行動を止めさせるためには、8つの方法しかないそうだ。(あ)の場合、ルーシーを仰向けに抱っこして足を拭く時に唸ったり歯を剥くことに関して、2)罰3)陽性でない強化4)自然消滅を待つ6)コマンド化する7)シェーピングをやってきて、まだ問題はなくなってはいない(少し緩和した程度)。・・・やっぱり1)しかないのかしら?