アゥゥッ!

 リハビリを始めてから、ダンスの基本動作だけは練習している。
 とはいえ、股関節に負担をかけるものは厳禁なので、ラージサークルやジャンプ(ルーシーのは反復横跳びだけど)、アップ(つかまり立ちだが、後ろ足に体重がかかる)は避けている。また、クリープ、ゴロン、ロール、ぞうきんは一回程度に留めている。
 運動量が激減しても、こちらが当初想像したよりも、ルーシーのストレス行動は少なかった。時々、和室の扉に身体をぶつけたり、尻尾を追いかけてグルグル回ったりしたけれど、それでも「ノー!」と声をかけたら、直ぐに止める。これには正直、複雑な思いだった。
 ストレス行動が少ないのは、股関節が痛むからだろうか?それとも3歳になって、少し大人になったせいだろうか?そんなことを考えていたら、自分自身、ルーシーにストレス行動をして欲しいのか、して欲しくないのかさえ、分からなくなる。
 ルーシーが、運動不足でストレスを感じているとするなら、ダンスの練習は、それを少しでも解消することができるかもしれない。
 それに、ルーシーは足を傷めてからワガママになった。「サークル」とコマンドを出しても無視してサークルに入ろうとしなかったり、「ダメ」と言われても、しつこくニオイを嗅いだり。足を痛めたことで、こちらが叱るのを遠慮していることを敏感に感じ取っていて、時折ナメた態度をとる。完全にタガが外れてしまう前に、こちらのコントロールをもう一度叩き込んでおかなければならない。
 とはいえ、家の中は狭い。技のシークエンスを練習するにも一苦労だ。ヒドイ時は、こちらは洗面所、ルーシーは廊下という時もある。指示が聞こえ難い時もあるからか、ルーシーはコマンドを出すと「アゥゥッ!」と言うようになった。
 青空ちゃんの場合は、やる気が声になることが多い。A先生に言わせると「吠えちゃダメと教えているのに、なかなか治らない。私のコントロールが行き届いていないからだ」とのこと。しかし青空ちゃん自身は、元来従順だし、どんな状況でも先生の指示に従っている。先生と一緒に踊れることに興奮してしまい、つい口から出ちゃうだけだと思うんだけど。
 一方、ルーシーの「アゥゥッ!」は文句だろうか?その割には、バック→ターンバックはスピードが上がったし、ゴロンやロールも指示を待たずに先走ってしまうことも多い。やる気はあるんだろうけど、一体何なんだ?
 今朝は、F公園に立ち寄ったついでに「ちょうちょ」を練習。新技のように聞こえるだろうが、ウィーブとターンを組み合わせたもので、単なるバリエーションである。組み合わせ技の場合、コマンドが「ウィーブ」「ターン」と複数になるので、どうしても褒めるヒマがなくなる。新しい言葉のコマンドをつけることで、少しでもスムーズに動ければということだ。
 芝生で「ちょうちょ」とコマンドを出すと、ルーシーは「アゥッ」と声を出して、こちらの足をくぐる。一回一回声を出すもんだから、やたらうるさいウィーブである。
 ま、文句にしろ何にしろ、夏の暑さにもかかわらず、本人は動いているからヨシとすべきか。ボチボチ頑張ろうね、ルーシー。