犬には分かる・・・のか?

 悩みながらルーシーの様子を観察して2日間。先入観がないとは言えないけれど、(あ)個人が見る限り、ルーシーの後ろ足は、以前とは違うと思う。N先生が仰った目安のひとつ、後ろ足の歩幅も少し狭い。足の運び方も、右足の方が左足よりも少しだけ低い。少し疲れやすくなったように思えるが、運動制限で1週間も全く動かなかったせいで、体力も筋力も落ちたのかもしれない。
 かと言って、動くのがイヤかというと全くそんなことはない。(あ)が股関節の近辺を触っても、あまり気にする様子はない。動き出す一歩がぎこちなく見える瞬間は、全くないとは言えないが、少なくなったと思う。とりあえず、N先生の指定したリハビリ期間は来週の火曜日まで。その時点で、まずN先生に訊いてみようと思う。F動物病院へ行くかどうかは、その後だ。
 本人はいたって元気だ。猫を見て駆け出そうとしたり、いつも可愛がってくださる人を見たら、かまってもらえるまで四本足を踏ん張って、その場を動こうとしない。こんな姿は、いつものルーシーそのもので、股関節に問題があるなどとは、到底思えない程だ。
 昨日の夕方、F公園へ歩いて行ったら、他のワンちゃんと飼い主さん達が引き上げるところだった。
 最初に近づいてきたのは、クーちゃんだった。幼なじみで、昔から駆けっこや取っ組み合いをして遊んでいた親友である。
 ところがクーちゃんは、ルーシーに気がついて、2、3歩小走りで近づいたのだが、そこでピタッと立ち止まった。ルーシーが近づいて、顔をつきあわせる。クンクンと互いのニオイを嗅ぎ、クーちゃんは少し離れた。
 後ろから来たクーちゃんのお母さんが「ルーシー、ちょっと遅かった。今、帰るところやねん」ルーシーは、大好きな人に会えて興奮。尻尾をブンブン振り回し、後ろ足で立ち上がって抱きつこうとする。
 こちらは必死にリードを抑えて、ルーシーが立ち上がらないようにしながら、なんとか事情を説明した。サンタ君のお母さんに、クッキー君のお母さんもやって来て、ルーシーの興奮状態はピークに。皆さん、心配して下さっていたらしい。その間、ルーシーは、あっちへ、こっちへと飛びつこうとする。ワンワン吠えだして、飼い主同士の会話も難しいほど。これじゃ、少しは良くなった足をまた悪くしてしまう。
 挨拶と事情の説明を終えて、二手に分かれて公園を後にする。ルーシーは、まだ甘え足りなかったらしく、みんなの方を何回も振り返っていたけれど。
 公園からの帰り道で(あ)はクーちゃんの態度を思い浮かべていた。いつもクーちゃんは、近づいてきて、ルーシーの出方を見る。ルーシーが「遊ぼう」と仕掛けてきたら、その誘いに乗って走りだすし、ルーシーがクーちゃんのお母さんのところへ行ったら、それはそれで納得して離れて見ている。決して、自分がしたいことを押しつけない。相手が誰であろうとも、相手のペースで遊んでくれるワンちゃんである。
 それでも今日のクーちゃんは、ルーシーと挨拶を交わした後、スッと離れた。まるで「遊べないのね」と言わんばかりに。これは一体何なのだろう・・・。
 先入観がないとは言わない。だけどクーちゃんの態度を見る限り、少なくとも「ルーシーは遊ばないのね。分かった。」という態度だった。無言で鼻面を付き合わせ、挨拶を交わしただけで、相手の状態が分かったのだろうか?
 飼い主失格と言われそうだが、クーちゃんの態度を見て、はっきりと分かった気がする。やはりルーシーは本調子ではないのだ。運動量を少し減らして火曜日まで様子を見る。そして、N先生にまず相談しよう。