叱られて・・・

 相変わらず足を拭かれると、唸って歯を剥くルーシー。叱られると一瞬反省するものの、次の瞬間は忘れて、再び「ウ〜」。散歩から帰ると足を拭く。つまり毎日2回は必ず叱られているワケ。全く学習能力のないヤツである。
 これまで、いろんな手を使ってきたけれども、即効性のある解決法はなかった。歯を剥き唸った瞬間に、サンダルを投げて玄関の壁にぶつけ、大きな音を出す。そして「ホラ、コワイのが来るよ〜」と脅すくらい。「歯を剥く、唸る→大きな音がする」と理解した段階で、少し我に返るようになった。それでも、あらかじめ「言わないよ」と注意されても、一回は歯を剥き唸ってしまう。ガマンする、黙って受け入れることはできないらしい。
 ルーシーは、「自分の何がいけないのか」「何をすべきなのか」を理解している。そこまでは来られたのに、それ以上に進めない。何か、もう一つ手を打たないとダメなんじゃないだろうかと思い始めていた。
 今日の夕方も、ルーシーは歯を剥き唸った。なぜか、この時は「コワイのが来るよ」も効果がなかった。そこで(あ)は「ルーシー、ウ〜言ったらダメ。言ったら、ご飯抜きだよ」と注意した。それでも、ルーシーは歯を剥き唸った。こちらは、仕事で神経がささくれ立っているところだったから、普段以上にムカついた。そこで、ともかく無視を決め込むことにした。
 その後、ルーシーは息を潜めて、こちらの様子をずっと窺っていた。(あ)が、ご飯の器を階段に置き、知らん顔をして座っていると、慌ててすり寄ってきた。何も言われないのに、お腹を出して謝ってくる。
 そこで、膝の上に仰向けに抱っこすると、再び「ウ〜」。静かに「ルーシー、いけない」と注意。そしてルーシーの足から手を離す。あくまで、ルーシーには自発的に膝の上に寝ていて欲しかったからだ。
 それでも、唸りは収まらない。こちらは無視し続ける。そのうちルーシーは不安になり、そのままの姿勢で唸るのを止め、こちらの表情を窺った。ともかく唸るのを止めたら、その瞬間に言葉だけで褒める。しかし次の瞬間には「ウ〜」。
 何回か、これを繰り返したら、ルーシーは静かになってきた。足を拭かれる訳じゃないから、仰向け抱っこ以上に嫌なことは起こらないことを理解したらしい。ある程度の時間、そのままで寝ていられたところで、こちらがOKを出して終了。トリックの復習に移る。
 なぜか、ルーシーはトリックの復習に俄然やる気を出した。昨日は、雨で運動不足だったのに、トリックの復習では「エ〜、またクリープゥ?」とブツブツ言っていた。ところが今日は「クリープですか?クロスも付けまっせ」とサービス過剰。
 そうなのだ。ルーシーは叱られると、こちらの機嫌をとろうとする。今回は、ご飯をお預けにされて、さらに焦ったらしい。普段なら文句を言いながら指示に従うのに、今日は「お母さん、楽しいね〜」と愛想笑いをして、「伏せ」を指示されたのに「ゴロン」まで付ける。何なのだ、このあざとい態度!
 ルーシーは「仰向けだっこをガマンしなくちゃ」と理解するより先に「なんとか相手の機嫌をとって、その場を切り抜けよう」としたのだ。つまり、ルーシーにガマンすることを覚えさせるのに失敗してしまった。ダンスに関しても、ここしばらく指示に従って動くことを強化してきたのに、妙なオマケまでつけてしまうし。これじゃ全く元も子もないぞ。
 本当に叱り方って難しい。こっちの気力も、コイツの頑迷さに負けてしまいそうだ。