叱られて・・・2

 ルーシーに、歯を剥き、唸る癖を止めさせ、ガマンすることを覚えさせたい。それさえなければ、ルーシーは概ね「良いワンコ」だと(あ)個人は思っている。確かにマイペースで、飼い主の指示に従わないことも多い。排泄は、屋内でできるクセに、自宅(庭も含めて)以外で敢えてしない。問題は他にもあるけれど、こちらが譲歩すれば、なんとかやっていける。歯を剥き唸ることに比べれば、大した問題ではないのだ。
 病気やケガで治療を受ける際、特に痛みを伴うものなら、おそらく防御本能が働き、他人に体を触らせようとしないに違いない。そうなったら、ルーシーを落ち着かせ充分に治療を受けさせるのは、飼い主自身の責任だ。飼い主がコントロールできないものを、犬の専門家と言えども他人に任せられる訳がない。飼い主を信用しない犬が、他人に安心して身を任すだろうか?
 ・・・てなこと、日中(あ)はツラツラ考えていた。そして夕方、再びルーシーを仰向け抱っこして足を触る練習をした。
 今度はフードは見せない。その代わり「ウー言ったら、ご飯無いよ」と言い聞かせ、ゆっくりと体を抱き、仰向けにする。やはりルーシーは歯を剥き唸る。膝の上で仰向けにして、ルーシーの体から手を離しても、そこから動こうとはしないのに。こちらが「いけない」と静かな口調で注意する。その度に唸る。
 不思議なのは、こちらが膝の上のルーシーに声をかけたり顔を見たりすると、ルーシーが歯を剥いて唸る。こちらが視線を離すと静かになる。無視すると、少なくとも歯は剥かない。低く小さく「ウ〜」と言い続けるだけだ。
 「ウー言った子、キライ」と、ルーシーの体を手で押しやる。すると慌てて戻ってきて、お腹を見せる。この時、こちらに後ろ足を向けてひっくり返る。謝っているつもりらしい。同じ仰向けの状態なのに、頭の位置が違うだけで何が違うというのだろう?そう思って、こちらが顔を近づけると、「ゴメンナサイ」の態勢で、歯を剥き唸る。コイツは反省しているのか、怒っているのか?何がしたいのか訳が分からん。
 それでも時々、歯を剥くのも唸るのも止める瞬間がある。そんな時、こちらが「グッド」と声をかけると、その途端に歯を剥いて唸る。こちらは褒めているのに、困ったもんだ。
 こりゃ無視するのが一番なのかも・・・そう思い始めたところで、ルーシーは、すっかり拗ねてしまい「お母さんは嫌なことばかりする」と自分からクレートに入ってしまった。こちらが「ご飯無いよ」と言い続けたせいもあるけれど。夕方は良く運動したから、お腹は減っているはずなのに。
 こうなったら持久戦だ。ここでゴキゲンを取る訳にはいかないのだ。一食くらい抜いたって、かまわないではないか。ともかく、ルーシーに「いけない」と言われたことをしないように、少しでもガマンすることを覚えさせなくては。これまで大きなケガや病気をしなかったのは、本当にラッキーなのだと思う。今後何かが起こって、獣医さんのお世話になる可能性を考えれば、今のうちに何とかしたい。
 それにしても、コイツの頑固さには、こちらが負けそうになる。ガンバレ、私。