やり直せるなら

 昔、読みかけて放り出した本を引っ張り出した。Terry Ryan先生の”Outwitting Dogs”である。ルーシーが初めてお世話になったトレーナーさんがRyan先生の弟子だったことから、この本を購入したのだが、ハッキリ言って、あまり役には立たなかった。
 理由はいくつかあるが、大きな理由は、本の大部分がパピーを家に迎えた人へのアドバイスだったからだ。当時ルーシーは2歳を超えていた。少々手遅れだった。
 拾い読みをしていて「こうしてやれば良かった」と思う。例えば、ルーシーを家に迎えた時期。生後3ヶ月半で来たが、これは遅すぎた。ペットショップの方針のせいではあるけれど、ワクチンさえきちんとしていれば生後2ヶ月でも良かった。元来体に触れられるのがキライだったのと、家に来た当初ゲリピーで1ヶ月近く療養を要し、環境の変化以上のストレスを与えないようにと考えて、あまり触らないようにしていたが、もっと触ってやれば良かった。
 本によれば、パピーを迎えるには生後8〜12週目がベスト。その後16週目までの間が、社会化に一番適した期間なのだそうだ。この期間、子犬はスポンジのように情報を吸収し、順応性を培う。さまざまな人々や犬に会わせて、ポジティブな経験をすることで、その後の性格に大きな影響が出るらしい。ちょうど療養中だったから、遅かったかもしれない。
 ルーシーは、なぜかヒゲ面が大好きで、ジョリジョリ言わせながら(た)の顔を舐めていた。そうそう、初めは男の人が好きだったんだよね。その後、女の人の方が好きになったけど。ヒゲやサングラスには抵抗がなかったけれど、マスクは見慣れず怖がったなぁ。お母さんの「白塗り仮面」(フェイシャル・パックの試供品をもらった)は見せたけど、あまり応用にはならなかったみたい(笑)。子供には積極的に会わせていたけれど、高齢者は避けていたなぁ。飛びつき癖があるから、相手を転倒させてはいけないと思っていたし。その後、公園にゲートボールをする高齢者軍団がスティック片手にやって来たら、警戒してワンワン吠えていたし。もっと積極的にいろんな人に会わせるべきだった。
 犬とのコミュニケーションも上手くできるようになったのかなぁ。そりゃ意思表示はできますよ。でも、苦手なヤツは苦手なままだし。鷹揚に構えて何をされようと知らん顔というのが理想だけど、そうはいかないわなぁ。逆ギレ傾向のせいで、見知らぬワンちゃんとの遭遇には、飼い主は毎回ヒヤヒヤしている。
 お世話になった飼い主さんのボーダーちゃんに赤ちゃんが生まれたと聞き、(た)に「仮に!仮にだよ。もう一度パピーを迎えるとしたら、やっぱりルーシーが良い?」と訊いてみた。「う〜ん」と考えて、「なんで、そんなことを訊くの?」。そりゃ、ルーシーを選んだのはアンタだからじゃん!「ボクはルーシーが良い」って言ってたじゃん!
 正直言って、(あ)は自分が選べるならルーシーを選ばないと思う。まずペットショップで購入することはないだろう。ブリーダー選びから始め、親犬を観察し、健康面・性格面を確認して、食い意地の張っていない、存在感の薄い控えめなワンコを選ぶと思う。
 おそらくルーシーも、今度はもっと車に乗せてくれて、フットワークの軽い、甘やかしてくれる飼い主を選びたいと思っているに違いない(爆)。