二重スランプ

 いや〜、超スランプ。笑わなしゃーない。
 今回はどんなコマンドを出されても、ルーシーはポカーンとしていることが多い。あらかじめ「○○、行くよ〜」と声をかけ、音楽に合わせて「○○!」とコマンドを出すのだが、それでも反応は非常に鈍い。初めはトリーツを使ってテンションを上げていたが、それも限界かも。トリーツを使い過ぎて、今度はドッグフードでは指示に従わなくなってきた。
 折しも体重は13.5キロと、目標を500グラムも上回ってしまった。筋力アップ、健康維持が目的のダンスなのに、トリーツで太ってしまっては意味がないし、肥満で股関節に影響が出てしまう。ムリヤリではあるけれど、先週からドッグフードに戻して練習することに。
 当然っちゃー当然なんだけど、ルーシーのやる気はダダ下がり。スタート位置に座らせ音楽をかけると目をショボショボの耳テレン。
 ひとつはダンスの振付構成にある。いきなり苦手な技から始まり、かなり長い間続けないといけない。比較的短いカウントで動作が変化するので、褒めてフードを与えるヒマがない。言葉だけでも褒めてやりたいが、決められた動作が中途半端なのに褒める訳にはいかない。ルーシーの側から見れば、自分が苦手とする技を一生懸命やっているつもりで、それなのに褒めてもらえず、ご褒美ももらえない。練習すればするほど嫌になってしまうのだ。
 昨夜の練習でもポカーンの状態。こうなったらしかたがないのでゴハン抜き。ゴキゲンをとって単一技の練習に切り替えたり、短時間の練習で動機付けする方法もあるだろうが、結局音楽がかかって全曲を通じて踊るとなるとポカーンの状態に戻るだろう。「指示に従わなかったら普段もらえる物も、もらえない」そう理解させられたら一食抜くくらい問題ではない。
 そう思う一方で、(あ)には分かっている。ルーシーが理解できるのは「どうやら今日はお母さんの機嫌が悪い。さわらぬ神にタタリなし」くらいなものなのだ。ルーシーは叱られても、また叱られなくても褒めてもらえない場合には、それが何故なのかを全く考えない。「どうして、お母さんは機嫌が悪いのかな?」と、ちょっとでも考えてくれたら良いのに。
 疲れ切ってTVの前でゴロンと横になった。ルーシーは離れた場所で(あ)の様子を観察して、時折ガウガウ言いながら自分の尻尾を追いかけていた。それでも(あ)が自分に注意もせず無視を決め込んでいるので、また離れて伏せて観察に戻る。そのうちTVだけを見つめている(あ)の視界に、黒く丸い物体がゆっくり入ってきた。ルーシーのお尻である。頭から来ないで、お尻からコビを売ってきたのだ(苦笑)。本当に困ったヤツだ。
 まるで二重のスランプだ。ルーシーのやる気が上がらないと、自分の意欲もわかない。これは今回初めて(あ)が経験した気分かも。それでも(あ)はムリヤリ自分のやる気を底上げしている。我ながら、かなり不自然だ。その一方で、このままじゃ二人ともダメになってしまうという危機感もある。
 A先生は「これを越せたら、ルーシーと次のステージに行ける」と励まして下さっている。越せないまでもトライする前からあきらめるのは嫌だ。おそらくステージでは大恥をかくことになるだろうが、問題はそこではない。
 そう自分に言いきかせながら、底なし沼でもがいている。突破口が見えない。辛い。