ニッチもサッチも

 夕方の散歩を前倒してわずか2週間。日暮れがどんどん早くなり、その時間でも時折ワンちゃんの姿を見かけるようになった。
 いつもの練習場所は、他のワンちゃんが遊んでいるようだ。しかたがないので、少し離れた場所でチョコチョコとダンスの練習。この場所の目の前には、ルーシーがいつも遊んでいる野原がある。ルーシーは早く遊びたいらしく、かなりブーブー文句を言う。それでも、おやつをもらえるから少しはガマンをしているらしい。やる気がない場合は、シブシブ指示に従って少し踊り、おやつをもらった瞬間に「ハイ、おしまい〜」と自分で区切りをつけようとするので始末が悪い。すぐ野原へ行こうとするのだ。そこで「まだ」「もう一回」と言うと、露骨に「ハフフフフ?」と不満げな声を上げる。以前よりやる気が出たとはいえ、まだまだやねぇ。
 気が付いたら野原の中に先客のワンちゃんと飼い主さんが。どうやらこちらの練習を見ていたらしい。いつもクリッカー・トレーニングをしているトイプーちゃんと飼い主の男性だった。
(あ)はクリッカーが苦手だ。クリッカーを押すよりも先に褒め言葉が口から出てしまうし、ルーシーに食べ物を与えると手がヨダレで濡れてクリッカーが滑るから(笑)。だから、このペアを見かける度に「偉いなぁ」と感心していた。こちらから声をかけたかったけれど、飼い主さんは男性だし何よりトレーニングの邪魔をしてはいけないので控えていた。
 昨日は飼い主さんから声をかけていただいた。彼らも他の組織で最近ダンスを始めたとか。「なかなか集中してくれなくって」と苦笑い。こちらも身につまされて「そうですよね〜」と苦笑い。来月この組織内で発表会があるので練習されているけれど、慣れたはずのこの場所でも周囲が気になってしかたがないのだとか。
 元来このワンちゃんは恐がりの性格で、特に他の犬が怖いそうだ。小型犬なら当たり前じゃないかしら?ルーシーに挨拶させようと思ったけれど「ちょっと無理だと思います」とのこと。そこで(あ)がルーシーを離れた場所に待たせて、このワンちゃんに近寄り、おやつを差し出す。それでも手の中のおやつをなかなか口にしない。かなり慎重。今回は触らないでおこう。ワンちゃんがこちらの顔を見てくれたので盛大に褒めて、ルーシーのところへ戻る。マテを解除すると、ルーシーが(あ)の前でオスワリした。するとワンちゃんは激しく吠え立てた。やっぱ怖いですか?
 さらに話を聞くと、このワンちゃんは生後7ヶ月で股関節の手術をしたそうだ。それまではアジを目指していたけれど、あきらめざるを得なかったとか。「何か一緒にできることは他にないかと思って」と飼い主さん。
 パンッッ!(膝を打つ音)
エライ!!!
 こんな近くにドッグダンスを頑張っているペアがいるなんて。そして、本来やりたかったことの実現が難しくなっても、犬と一緒にできる他のことを探すなんて。私らも頑張らないとイカンなぁ〜。
 しかし、このダンスはかなりの地雷。足を乗せてしまったけど自爆は必至。
足を外す訳にもいかず、ニッチもサッチも、どうにもブルドッグや〜!!グルメリポーター芸人さん風に読んでください)