気長に待つよ

 ホットカーペットの上で横になりTVを見ていると、ルーシーが近づいて来る。(あ)のスネに頭をもたせかけて横になり、じっとこちらを見る。手を伸ばして耳の後ろから顎にかけてモシャモシャと触ると、気持ちよさそうに目を閉じる。そして前足でチョイチョイと掻くような仕草。肩胛骨から足をマッサージする。口が少し開いて、下の前歯が見える→いわゆるウシシ顔。ゴロリと寝返りをうち、お腹を見せるので何回かお腹を優しく撫でる。気持ちいいのか体をクネクネ。大抵の場合、ここで満足するor飽きるらしく、立ち上がってどこかへ行ってしまう。
 ルーシーは元来非常にドライで、知り合いの飼い主さんはともかく、家族に甘えようとしなかった。子犬の頃から体を触られると体を固くした。仰向け抱っこは大嫌いで、なんとかホールドから抜け出そうと、前足でこちらの腕をタップしたり、グネグネ動いたり。体を触られるのがイヤで、今でも足先を触られるのは大嫌いだ。
 思い出して笑ってしまうのだが、(あ)がある時「エライねぇ〜」と頭を撫でると、ルーシーは、まるで汚い物に触られたかのように自分の前足で頭を掻きブルンと身震いした。トレーナーさんからは「褒める方法には、体を優しく撫でるというのもあります」と習ったけれど、やられた側は自分が褒められているとは到底思えなかっただろう。何せ「良い子だねぇ〜」と声をかけた上で背中を撫でても、本犬は「何すんの?」と後ずさりするくらいだったもの。マッサージが気持ちの良いこととは思えなかったのだろう。
 いつの頃か、自分から体を寄せるようになってきた。それもお尻から(爆)。それでも、なかなか上半身は触らせない。触ろうとするとスッと離れた。こちらも無理強いはしなかった。後ろ足の筋肉マッサージをして、ある程度リラックスしたところで手を伸ばして背中を撫でる、ルーシーは一瞬「ん?」という表情を見せた。そのまま体を離すこともあったし、撫で続けさせることもあった。すべてはルーシーの気分次第。ここでも無理強いはしないことにした。
 そのうち(あ)がイスに座っていると、足の間に入ってきて座ることが多くなった。左足に体をもたせかけるように座る。首筋をマッサージしたり、鎖骨あたりを撫でたり。頭の絶壁(頭頂の尖った骨あたり)や耳の後ろなどを撫でても嫌がらなくなった。ある程度リラックスすると、今度は足元に横になりゴロリとお腹を見せるようになった。マッサージが気持ちの良いことだと分かってきたらしい。散歩途中で他の飼い主さんと立ち話をしていても、ルーシーは(あ)の左足に寄り添って座り、(あ)に「首筋を揉んで〜」と訴えるようになった。
 少しずつ体の一部が接触した状態を好むようになってきた。とはいえ「抱っこして」とは言わないけれど。そして家族に対して甘える声を出すようになってきた。朝寝坊して起きてきた(あ)を迎えるときや、帰宅した(た)を迎えるとき、「ァウウウウン」となんとも切なそうな声を出す。少しずつ甘えっ子になってきたようだ。
 昨晩はクネクネした後、後ろ足を伸ばす。なんだか伸びをしているような感じ。腰の辺りを揉んでやると、ヘラヘラと笑いだし、後ろ足をピョコピョコと動かす。大笑いして、さらにクネクネ。クネクネしながら後ろ足を蹴る。少しずつイチャイチャするのが好きになってきたようだ。
 おそらく、これを読んだ飼い主さん達の大半が「そんなことは、ウチの○○ちゃんなら家に来た時から出来た」とか「なんで、犬にそこまで遠慮するかなぁ」とか思われていることだろう。ルーシーは虐待を受けたこともないのだし。それでも生来の性格なのか、自分が納得しないと何事も受け容れられない。押しつけられると反発する。力で抑えたり我慢させたりしても嫌悪感は増すばかりだ。本犬に任せて、望まないことはしない。だって服従訓練じゃなくてマッサージだもん。リラックスできないマッサージなんて意味ないでしょう?
 4歳でようやく飼い主とイチャイチャできるようになってきた。後は、自分から抱っこを求めるようになって欲しいなぁ。
 ルーシー、お母さんの腰痛が酷くなる前に頼むよ(笑)。