迷い犬と届出

 金曜日の夜、ご近所の犬友さんからtelアリ。迷い犬を預かったものの、探すアテがなく困っている様子。犬の大きさや色などを説明されたが、こちらも全く心あたりがない。こちらは手分けして顔の広い別の犬友さんに声をかけることにした。その間、飼い主さんが探しておられるかもしれないからと、警察に届け出るように伝えた。
 「人なつこくて本当に良い子なのよ。飼い主さんは絶対心配されていると思うわ。」
 ご自身のワンちゃんは迷い犬を熱烈歓迎しているらしい(ルーシーならダメだと思うなぁ)。突然の闖入者にも波乱はないようで、ひとまず安心だけど、やはり元の飼い主さんのところに戻すのが犬にとっては一番幸せだろう。
 犬友さんは警察に届けたものの、そのまま迷い犬を自宅に連れ帰り預かることにしたらしい。警察に身柄を引き渡したら、一定期間の後、保健所に連れて行かれてしまう。
 警察からの連絡を待つ間、犬友さんは迷い犬を連れて町のあちこちを散歩されたそうだ。散歩中に出会う飼い主さんに「この子、知りませんか?」と尋ねて回ったらしい。本格的な寒気の到来で散歩に出る人もめっきり少なくなったから大変だったに違いない。それでも、なかなか迷い犬を知っている人には出会えなかったそうだ。
 犬友さんは、町内のツテを頼って訊いたところ「似ている子を知っている。だけど色が少し違うと思う。」詳しく訊くと、そのワンちゃんには子犬の頃に会われたらしく、その頃と色が違うのだそうだ。ダメモトでその方が飼い主さんに連絡してくれたら、迷い犬はその家のワンちゃんであることが判明した。
 かくして、迷い犬は飼い主さんのところに戻ることができた。これも、この犬友さんの執念が実を結んだといえるだろう。連日の捜査でお疲れのところ、わざわざこちらにも報告して下さった。(あ)自身は努力らしいことはしていないのだが、ワンちゃんのことが気になっていたのでホッと胸を撫で下ろした。同時に、お話を聞いて少し呆れてしまった。
 迷い犬の飼い主さんは、脱走から2日経っても警察に届けていなかったそうだ。
 我が家の近辺、夜間はマイナス気温である。屋外で飼われている子も、この季節になると、その大多数が夜間は屋内に入れてもらっている。また高速道路も近くにあり、脱走犬が事故に遭うと聞く。町内は、都会に比べて街灯が最低限しか整備されておらず、一つ一つの電灯が暗い(他の市と違って、市民が負担しているからと聞いた)。山に隣接して走る道路などは、ほぼ真っ暗と言っていいだろう。車の量は都会に比べて少ないけれど、逆に車はスピードを出すから事故に遭う可能性は高いのだ。それに−−自分の犬を基準にしてはいけないとは思うけれど−−迷い犬が他人や他の動物に危害を与えることだって考えられる。これがルーシーなら、(あ)はオチオチ寝ていられないはずだ。
 (あ)が自分で保護したワンちゃん、そして保護に係わったワンちゃんについて考えると、飼い主さんが脱走に気づいていないのが半分、残る半分は「犬が自分で戻ってくるだろう」とノンビリ構えているケースだ。ハナから脱走に気づいていないのはしかたがないが、気づいていて何もしないのは、いかがなものか?戻ってくるのは5分後か5日後か分からないのだし、戻りたくても事情があって戻れないことだって考えられるのに。
 いみじくも(た)がぽつりと一言。
 「飼い主が何もしないで、保護した側が一生懸命飼い主を探し回るってのは、理屈に合わないね。」
 そのとおり!
 自分の犬が脱走したら、また行方不明になったら、直ぐに警察に届け出た方が良いのでは?
 「迷い犬ごときで警察の手を煩わせては」と思われるかもしれないけど、事故・事件を未然に防ぐためにも必要じゃないかなぁ?届け出ないせいで、もっと大変な事態を引き起こし、より大勢の警察スタッフの手を煩わせることだってあり得るのだから。
 ルーシーだって例外ではないから、重々気をつけることにしようと思う。