ルーシーと抽象概念

 最近パピーちゃんと出会うことが多い。大型犬から小型犬までさまざまだ。ルーシーは、小型犬のパピーの場合、先にニオイを嗅いで「ハイ、終了」という事が多い。相手は尻尾を股の間に入れたまま体を固くして通過儀礼の終了を待つ。で、ルーシーが飼い主さんに愛嬌を振りまいている間に、パピーが背後から、おそるおそるルーシーのニオイを嗅ぐというパターン。一貫してジコチューで一方通行のコミュニケーションである。
 問題は、ルーシーより体格の大きなパピー。こちらも緊張する。犬社会では「成犬はパピーを本気で攻撃しない」というルールがあるものの、ルーシーの場合、母性があるとも思えないし、ホンマにルールが分かっとるのか少々不安な面もある。
 泥縄だけど、知らない子との初対面では、あらかじめ「優しく」と言うことにした。友好的に挨拶できれば「優しいね〜、言わないね〜、良い子だね〜」と褒める。初めての出会いでは、相手が何者か分かっていないのだから、ルーシーの神経は100%相手に向けられているはずだ。それでも「優しく」と言われたら、ルーシーは相手の様子を見ながら接するようになった。たとえば、必要以上にニオイを嗅ぐとか顔を近づけるとか、相手が少しでも「コワイ」という素振りを見せたら止める。これが優しいかどうかはともかく、友好的ではある。
 朝の散歩でフードを与えながら歩く。ハラペコのルーシーは、(あ)の手に飛びつくようにしてフードを取ろうとする。「優しく」と言われると、そっとマズルを当てるようになった。「ハンド(お手)」とコマンドを出すと、ルーシーはポウをギュッと握って爪を立てることが多かった。「優しく」と言われて、ゆっくりポウを置くようになった。爪は相変わらず立ってるけど(爆)。
 ルーシーが「優しく」の意味を、ほんの少しだけど理解してきたような気がするのは、親の欲目だろうか?
 その反面「なんでコレがワカランのだ?」というコンセプトもある。その最たる例が「反対」。いろんなトリックで反対のコンセプトが理解できたら楽だろうなぁ。ターンをして「反対」と言われたら逆方向に回るとかね。ジャンプでもターンでも何でも反対で済ませる。いちいちコマンドを考えて自分で覚えるのもメンドクサイし(笑)。
 ところが「優しく」や「ちゃんと」という抽象概念は理解できる(?)のに、「反対」は理解できないらしい。確かに、今のルーシーにとって反対はクロスの反対。つまり、「クロス」のコマンドで一旦組んだ前足を、「反対」のコマンドで上下(左右?)逆さまに組み替えること。ちなみに、それすら足が短くて届かず、上手くできないんだけど(苦笑)。
 前に教えた「スティック」。ルーシーは、(あ)が持ったスティックを中心に一方向に回ることができる。できれば反対方向にも回って欲しいので、ダメモトだけど指で方向を示しながら「反対」と言ってみたところ・・・。
 「はんたい・・・はんたい?ええええ〜っ?」
 ↑驚くまでタイムラグがあり、かなりニブイことが証明された(笑)
 分からないことがあると当惑する。当惑すると、その場に立ちつくすか、またはアウアウ言いながら指示されていない動きをするか。誰も「ゴロン」や「ベッグ」なんて言ってないだろ〜?
 挙げ句の果てに「お母さん、私には分かりません〜。お願いだから、そのおやつを下さい〜」と、時代劇ドラマの直訴シーンみたいに平身低頭でやって来る。そこで「だから違うんだってば」「落ち着け」と言うと、お腹を見せて「ゴメンナサイ」の大安売り。・・・しょうがないヤツである。
 まぁ、「優しく」も本当に理解しているかどうかは怪しいもんだ。だけど、理解してると思いたいんだよね。アホアホ・ルーシーの飼い主としては。