人道的?

 シーザー・ミラン氏は、TV番組“Dog Whisperer(邦題:さすらいのドッグトレーナー)”で日本でも名前が知られるようになった。最近、この番組を放映するナショナル・ジオグラフィック・チャンネルが、アメリカン・ヒューメインという子供および動物の保護団体から「シーザー・ミラン氏の番組は、非人道的で時代遅れであり、不適切だ」との抗議の書簡を受け取った。
以下、dog news記事の抜粋。
 同団体は、ペットのオーナーが責任を果たし、不必要とされたペットの安楽死を減らすことに対する一般市民の認識を向上させようと活動しており、ミラン氏が番組内で指示する「数々の非人道的なトレーニング手法」に対して、困惑しているという。同団体は、ミラン氏が一般のオーナーが採用できるトレーニング方法として推奨しているもので、「残酷で危険な対応」と考えるいくつかの事例を書簡に記している。一つの例では、エピソードの中で犬が半ば酸欠状態になっていた。
 この例では、ミラン氏が攻撃的な犬に対して、まずカラーを段階的に絞めて首つり状態にして、さらに首を掴んで地面に犬の体を押しつけ身動きできないようにしていた。ミラン氏の目標は、手に負えない犬を力で抑えるというもので、犬の脳への血液供給を部分的に少なくすることで、目標を達成していた。
 書簡は、ナショジオが同番組の放映を即時に中止し、番組で紹介されている手法は非人道的であるという声明を発表するように、また、ナショジオがお手本となって、適切かつ苦痛を与えない動物へのトレーニングを紹介する番組を制作するようにと求めている。書簡の中で、同団体は「ナショジオが動物を暴力的に扱うことは受け容れられることだという矛盾したメッセージを送ることを止めれば、ペットとのつきあい方を向上させるという目標を達成し、さらに大きなプラスとなり成功を達成することができる」と訴える。
 また、書簡を書いた同団体の動物保護サービス副会長であるトーゲンセン氏「いち早く、苦痛を与えないドッグ・トレーニングへの移行を訴えてきた私達は、番組で動物を必要以上に乱暴に扱い、非人道的なトレーニング手法を紹介することは、動物に対しても、番組に出演する人々に対しても、害を与えかねないと考える」と訴える。「効果的なトレーニングと動物の適切な扱い方に関して、不正確なメッセージを正しいものとして出すことは、番組の視聴者全員に害を与える」
 また、トーゲンセン氏は、あるエピソードで犬と女性の安全性が脅かされたと言う。ジャーマンシェパードにショックカラー(電気)を採用したことで、ショックに苦しむ犬の攻撃性が飼い主の女性に向けられ、彼女が腕を噛まれた。「ミラン氏はショックカラーにより犬に苦痛を与えることで、犬の問題行動を修正しようとしていたことを、番組は視聴者に報せていなかった」と指摘する。

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 (あ)個人は、シーザー・ミラン氏の手法は分からないけれど、根本的な考え方は、自分のような無知で経験の少ない飼い主には、理解し易いと考えている。そりゃ、犬の体を押さえ込んで、相手に力づくで言うことをきかせるのは、人道的とは言えない。やる人間だって、他に方法がないからやってるんだろうし、やっていて気分が悪いんじゃないかな?でも、これは犬同士のコミュニケーションとしては「アリ」なんだと思う。
 彼のアプローチでは、犬は人間とは違う生物であり、人間に対するやり方ではなく、犬に理解できる方法でコミュニケーションをしなければならないと考えているのだと思う。だから、これは犬道的ってことではないか?必ずしも人道的である必要はないのでは?そりゃ、思いやりがあって、人道的な方が、教える側も見ている側も気持ちが良いに決まってるけどさ。
 ただねぇ〜、ショック・カラー(電気だろうが、そうでなかろうが)については、ちょっと考えちゃうなぁ。装着させられた犬にとっては、始終、自分の首が噛みつかれている状態。犬がず〜〜っとストレスを感じている訳だから、自分の攻撃性を抑制するストレスは大きくなる一方ではないだろうか。どこかで爆発しても、しかたがないと思う。他に方法がなかったんだろうか?
 おそらくミラン氏にしたら反面教師として紹介したんだろうなぁ。生まれた瞬間から攻撃的な犬はいない。攻撃性はふくらんでいくものだから「その兆候が見えたところで対処しないと、こんな大変なことになるよ」と言いたかったんだろう。
 それはともかく。(あ)は、全面的にシーザー・ミラン氏を支持するつもりはないけど、彼がそもそも"humane(人道的)"に犬をしつけようとは考えていないのであれば、彼の手法は"inhumane(非人道的)"だから許容できないと批判しても意味がないと思う。大体、犬にとって、人道的に扱われることが良いことかどうかさえ分からないんだから。