『緊急』って?

 只今、ルーシーは右耳を治療中。耳の奥に雑菌が繁殖したらしい。過去にもあったことだけど、今回は最初の兆候が違っていた。
 先々週、ルーシーは夕食を終えて昼寝していたのだが、突然立ち上がり、繰り返しブルブルと頭と体を振り始めた。ここで言う「ブルブル」とは、寒気や恐怖による震えではなく、体毛の水切りのときの動作である。
 ルーシーが食事の直後に体をブルブルしたり、体を壁や床、絨毯に擦りつけたりするのは、日常的である。その動作の後で「グゥエェェ」とゲップが出る。ガッツいて食べるから、食べ物と一緒に空気が胃腸に入ってしまうのかもしれない。ちなみに(あ)は食後のこれらの動作を「ゲップの準備運動」と呼んでいる。
 だから、この時も「すぐに終わるだろう」と思っていた。ところが何回もブルブル。廊下の壁やドアに頭や体をぶつけるような仕草も繰り返す。食事から1時間以上も経っていたし、動作を始める前は、本犬は寝ていた。興奮したり、胃腸に空気が入る要素がない。こちらが呼びかけても、アウアウ言うばかりで、こちらの言葉は耳を素通りする。
 一体何なんだ???
 「脳や神経に異常が出たのではないか、病院に連れていこうか」と思ったのだが、時計を見ると7時3分前。車で病院に向かっても、通常の診療時間内には間に合いそうもない。どうしたものかと悩んだけれど、とりあえず病院に連絡してみた。
 先生に「緊急ですか?」と訊かれ、応答に困った。
 その緊急かどうかが分からないのだ。
 ブルブルも体をぶつけるような仕草も、1〜2回で終わるなら心配はしない。
 動作を始めて約30分が経過し、電話で話している間も、ルーシーがアウアウ言う声や廊下ではツメが床に当たる音など盛大な物音が聞こえていた。
 問題は同じ動作を繰り返し、なお収まりそうもないこと。脳や神経的な疾患だったら、緊急事態かもしれない。
 先生は、こちらの説明を聞いた上で「まっすぐ歩けますか?」と訊いた。
 犬は、まっすぐ歩いているつもりでも進行方向が左右のどちらかに曲ってしまう場合は、脳の異常が疑われるのだという。
 とりあえず真っ直ぐ歩けるようだし、何回か名前を呼べば、一瞬だけど、こちらを見るようになった。脳の問題では なさそうだ。考えられる問題を教えてもらい、家に薬があることを確認した上で、しばらく様子を見ることになった。その後の処理と経過については、別の機会に。
 それにしても―――。
 緊急なのかどうかは、素人では分かりにくい場合もある。今回のように、動作自体は日常的なものでも、際限なく繰り返して終わりそうもない時などは、特に判断に困る。原因に心当たりがない場合は、なおさらだ。
 診療時間外の診療となれば、追加料金が必要になる。獣医さんにだって自分の時間や家族との生活があるのも分かっている。だけど、飼い主の判断ミスで対処が遅れて大事になることは避けたい。電話で説明するより、追加料金を支払ってでも病院にペットを持ち込んで診てもらった方が、症状が軽くて済むことだってある。電話で説明することもままならないケースだってあるし。
 飼い主が、緊急かどうかを判断する材料はないものか?
 調べたところ、ベッカー先生が教えてくれました!

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次のような兆候が見られたら、昼夜を問わず、動物病院へワンちゃんを連れていきましょう。
- 発作・失神・虚脱
- 目の怪我(症状が軽くても)
- 嘔吐または下痢(約1時間以内に、2、3回以上も嘔吐または下痢をする場合。また嘔吐物または排泄物に血がまじる場合はいつでも
- アレルギー反応(顔周辺が腫れる、じんましんが出るなど。じんましんは腹部に発生することが多い)
- その他、毒物接種が疑われる場合(不凍液、殺鼠剤、殺虫剤、人間用の医薬品など)
- 蛇や毒蜘蛛に噛まれた場合、カエルを舐めたり食べたりして毒物が体内に入ったと考えられる場合
- 熱射病など(暑すぎても、寒すぎても。また、ペットが回復したように見えたとしても。表面上は問題なさそうでも、体内は別の話なので)
- 開いた、または血が出続ける傷または裂傷、または他の動物に噛まれた場合は、それがどんなものであっても
- 外傷(車に轢かれたなど。表面上問題なさそうでも、体内は別の話)
- 呼吸の問題(慢性的な咳、呼吸困難、または溺れた場合など)
- 排尿・排便が困難な場合
- 鼓腸症(嘔吐しようとしたり、泡を吐く場合。唇をしきりに舐め、背を丸める。お腹から通常の腹鳴や消化音が聞こえず、腹部が張った状態など)

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年末の忙しい時期を迎え、愛犬が突如異常を見せたら、それだけで飼い主はパニックを起こしかねない。仕事や忘年会、イベントや大掃除も大事だけど、やはり健康が一番大事だし。犬も人間も、元気に新しい年が迎えられるようにしたいものです。