耳のハナシ

 前日に書いた耳のハナシ。ルーシーが繰り返し頭を振ったり、頭や体を廊下の壁にぶち当てたりし始めたとき、(あ)が最初に疑ったのは耳だった。しかし耳を覗いても、ダニや異物、汚れらしきものは見当たらない。我が家では耳は(た)の担当。(あ)は怖くて触ったことがなかった。獣医さんに電話して、脳や神経の異常ではないこと、緊急治療が必要ではないことを確認した後で、再度、コワゴワと耳の中を覗いてみた。やはり何もない。これ以上バタバタされては困るのでエリカラを装着させて休ませた。
 帰宅後(た)が調べてくれて、なお洗浄と薬(前にもらっていた外耳炎のクリーム)を施してもらったら、一旦は収まった。汚れはナイという。翌朝もチェックして塗り薬を塗ってもらい、エリカラ装着。洗浄後や塗った途端は、ルーシーも耳に違和感があるため、しきりと頭を振ったりするのだが、時間をおくと忘れる。「(病院に)行かなくて良いだろう」と(た)。
 ところが1週間ほどすると、また頭を振り出した。それまでに、ルーシーは、自分が頭を振ると、耳をいじられたりエリカラを装着されたりすると理解したらしい。(あ)が見ると止めるようになった。その代わり、やたらと早い時間に寝床に入る。こちらが寝静まった頃に起きて、後ろ足を使って耳を掻いていたらしい。こちらはベッドのクッションをフワフワのものに変えたばかりだったので「新しいクッションが気に入ったらしい」と呑気に考えていた。
 こちらが見ている間に、なんとか体裁を繕っていたルーシーだが、耳はごまかしきれない状態になったようだ。ウグウグ言いながら耳を掻いているところを現行犯逮捕。今度は掻いた跡とカサブタらしきものが見えた。
 N先生は専門的な機械で耳の奥まで見てくれた。「あ〜、汚れてますねぇ」
 病院に来るまでの間に、(た)が何回か洗浄したはずなのに、まだ汚れている?それも右側だけ?
 「とりあえず洗ってみましょう」
 犬の外耳は途中で90度近くの角度で折れ曲がっていて、素人が懐中電灯で見たくらいでは見えない。折れ曲がっているせいで、少々洗浄液を入れても奥まで届かない。犬が頭を振ったら、耳に入った物は外に出るような構造なのだ。だから、中途半端に入れた洗浄液は、奥まで届かず、頭を振れば外に出てしまう。
 洗浄する場合は、犬の耳殻を天井に向け、できるだけ穴の奥の方まで洗浄液の容器を突っ込んで、ドボドボ入れる「ドボドボ」というのは、「え〜?そんなに入れて良いの?」と思う程度ということ。そして耳殻の下の辺りを片手で揉む。液を外耳の壁に行き渡らせる。
 次にティッシュペーパーで、浮き上がった汚れを取る。犬は首をかしげた状態を保たせることが必要だ。浮き上がってきたのは、剥がれたカサブタにも見えるけれど、先生に言わせると汚れらしい。ルーシーの耳の奥は、赤くなっていて表面がボコボコした状態。外耳の壁が荒れると、菌が付き易くなり繁殖してしまう。
 ティッシュペーパー3枚(!)で溶液と汚れを吸い取った後は、少量の脱脂綿を指にとって、奥の方の水分と残った汚れを取る。「綿棒は使っちゃダメですよ」と先生。
 新しい薬は液状で、「付けるとサラっとしているから、クリームより違和感が少ないでしょう」とのこと。治療中なので、3日に1回、耳を洗浄し、1日2回薬を付けて1週間ほど様子を見ることになった。


 ちなみにベッカー先生曰く

 健康な犬の耳は内側が薄いピンク色でキレイです(ルーシーはちょっとグレーがかっている)耳垢は黄色っぽい、または茶色が正常ですが、カサブタのようなもの、茶色いシミ、または濃い茶色のベトベト(細菌感染)は問題です。獣医が耳を診る時、耳の周辺が異常に熱くなっていないか、また滲出液がないか、異常なニオイがないかを調べます。実に、獣医の研ぎすまされた嗅覚で、問題が発覚することも多いのです。また、外耳に入り込んだ異物(草の芒やタネ)がないかをチェックします。草の芒は柔らかくなるため、犬も初めのような違和感を示さなくなりますが、(頭を振るのを止めても)耳の外に出た訳ではないので、取り除いてやる必要があります。最近の研究では、多くの耳の細菌感染が環境アレルギーによるものであることが分かってきました。ダスト、ダニ、花粉、人間の皮膚に対してもアレルギーを持つ犬は、耳を掻いて、外耳の壁を傷つけ、細菌への二次感染が発生します。

 ルーシーの場合、右側の耳だけが汚れ細菌に感染していた。先生曰く「片側だから、アレルギーではなく、たまたまだと思います」とのこと。耳をいじられて、エリカラを装着させられたルーシーは、頭を少し傾け、右耳が下がった状態で、なんともミジメな表情だった
 早く治して、ピカピカの笑顔が見れますように!