素朴な疑問

 先月のこと。散歩の途中で、ご近所ワンの飼い主さんが狂犬病(ワクチン)、行った?」と訊くので「忘れてしまいそうなので、ウチは早い時期に行きました」と応えたところ、暗い顔で「行きたくないのよねぇ」と仰る。注射のついでに、体重測定とフィラリアの血液検査をする。体重測定が嫌なのだそうだ。
 このワンちゃんは、中型としては体格が小さいし、小型としては大きい。フィラリア予防薬は体重の範囲によって違うのだけど、ワンコの体重は、ちょうど境目あたりらしい。飼い主さんとしては、ワンちゃんの体重を、なんとか低い範囲に収めたいけれど、大抵、この時期の体重測定で、毎年、数百グラムほど目標からアシが出てしまう。
 「去年なんか4月の時点で300gオーバーだったのね。お医者さんに『絶対痩せさせますから』って言って、ムリヤリ(低い体重範囲で飲むべき)お薬もらってきたのよ」
 実際に薬を飲み始めるまでの1ヶ月。ダイエットと運動でアシが出た部分を減らしたそうだ。高齢になったワンコにとっては、なかなか難しいけれど、ご家族が一致団結して頑張っておられたとか。
 毎年、都合6ヶ月ほどフィラリア予防薬を飲ませる。「年6回だもん。お金もバカにならないじゃない?」と、この飼い主さんは口では仰るけれど、それ以外のことも気にされているのだろう。
 たとえば、ある薬で設定された境目が10kgだとしよう。体重が300gオーバーして10.3kgになったら、適用されるのは、その上の範囲で10〜20kg用になる。体重20kgの犬と10.3kgの犬が同じ量の薬を飲むというのは、どうなんだろう?「害はないのかしら?」と心配されているようだ。
 その差はほぼ10kgで1範囲に相当するのだ。これを小さいと見るのか、大きいと見るのか。もちろん、薬を飲まないといけないことは理解されている。だけど必要以上に薬を服用するのは、いかがなものか?
 たとえば、獣医さんで他の薬をもらう時、錠剤が半分や4分の1に割れていることがある。ルーシーの体重に合わせて割ってくれているのだろう。ジェネリック薬や人間用の薬を使われることもあるだろう。だけど、フィラリアやノミ・ダニの予防薬の場合、ルーシーの体重に合わせて割ってもらったことはないし、「1回につき半分ね」なんて指示も受けたこともない。
 確かにフィラリア予防薬は一種類だけではないから、体重の範囲が合わなくなったら別の種類に変えるのも、ひとつの選択肢だ。しかし、薬との相性もある。できれば種類は変えたくない。ルーシーはアレルギーを起こす可能性もあるので、この飼い主さんの気持ちはよく分かる。
 かくして4月はダイエットの月―――。
 小型犬のダイエットは難しい。元々の体重が少ないのだから。知り合いの中には、ほんの200gで「激太り」と言われてしまった子もいる。また暑くなれば犬は動かなくなる。運動量が減ると減量はますます難しくなる。飼い主さんが「頭がイタイのよ」と苦笑いされるのも、うなづける。

 ちなみに(あ)だけかもしれないけど、実は素朴な疑問がある。

 そもそもフィラリア予防薬は、なんで体重別になっているんだろう?

 だって、体内にいる虫を殺す薬なんだよねぇ?ということは、犬の体の大きさよりも、体内に虫がどれだけいるかが問題じゃないかしら?
 体格が大きければ表面積が大きいから、蚊に刺され易くなって体内にいる虫も多いってことなのかなぁ?
 今度、獣医さんに行ったら訊いてみようと思う。