大きなお世話だけれど

 ボーダーコリーを扱うブリーダーが崩壊し、先週、ボーダーコリーの飼い主さん(複数)のブログで『注意喚起』の記事が掲載されている。崩壊したブリーダーの繁殖犬は、他のブリーダーに引き取られたらしいが、崩壊ブリーダーはこれまで股関節形成不全の子犬を出していて、購入した側から申し入れても、その後も同じ掛けあわせで交配・繁殖を続けていたという。つまり遺伝病の因子を持った犬が、これまでは1箇所に集まっていたのだが、他のブリーダーに行く事で――今後も繁殖することになるなら――他のブリーダーからも遺伝病の子犬が出てくるリスクが拡散してしまったことになる。
 純血種の交配では、遺伝病のリスクをなくすことは非常に難しい。特に、犬種の歴史上、牧羊犬としての『性能』だけを重視して交配してきた場合には、親には遺伝病の兆候が見られなくても、ずっとずっと祖先に遺伝病を発症した子や、発症しなくても、その因子を持っていたがいたかもしれない。だから、親犬に対してどんなに検査をしても、慎重に慎重を重ねても遺伝病が出ることはある。ただし、リスクを減らすことはできる。遺伝病に罹っている、またはその因子を持っていると分かった犬を交配に使用しないことだ。
 ルーシーは軽度の股関節形成不全で、叔父にあたるボーダーコリーも同じ病気である。別々のペットショップで購入したが、子犬を販売している会社が同じだった。早い時期に、この飼い主さんから「(ルーシーも)股関節形成不全の可能性があるかも」と教えていただいた。ルーシーに股関節形成不全の診断が下った段階で、(あ)はルーシーを購入したペットショップに連絡して診断を伝え「ブリーダーに連絡をとりたい」とお願いした。今後の交配・繁殖に、これらの犬を使わないように申し入れたかったからだ。
 ペットショップは、業界においては購入者に一番近いはずだから、こちらの意向を汲んでくれるものと思っていた。ところが(あ)の申し入れに対するペットショップの回答は「個人情報なので教えられません」の一点張り。ペットショップ本社の仕入れ担当者に直接連絡し、お願いしたところ「(ルーシーは)ネットオークションで購入したので分かりません」。非常にいいかげんな回答だった。
 その後、偶然、血族のボーダーコリーに出会うことができ、飼い主さんにブリーダーのことを訊いたところ、すでに廃業したとのこと。結局、ペットショップからブリーダーに連絡をしてもらうようにお願いしただけで、(あ)の調査は終了せざるを得なかった。
 犬をペットショップから購入する場合、法律上では『物品』の売買契約を取り交わすことになる。契約では、ルーシーの場合には、保証期間は引渡し後20日。その間に『瑕疵』があれば、『代品』を出すとあった。これらの用語だけでも腹立たしいけど、まぁ、それはおいといて。なお、ここで言う『瑕疵』は、あくまで明らかに目が見えないとか神経面に問題がある等、日常生活や飼育が困難という場合であって、股関節形成不全は含まれない。
 犬をペットショップで購入する場合、その多くが生後3〜4ヶ月くらいで家に迎え入れることになる。股関節形成不全の最終的な診断は、犬の骨格が成犬まで成長した段階(ボーダーの場合は1才半くらい)で行われるから、とても購入後20日間で判断できるものではない。(ちなみに診断自体は生後6ヶ月からできるが、あくまで骨は成長途中。以後の成長次第で診断が変わる可能性はある。)
 血統面から確認することはできるだろうが、購入以前やその時点で血統書を見ることはできるんだろうか?ちなみにルーシーの場合、血統書が来たのは、ルーシーが我が家に来た7月16日から2ヶ月以上を経た9月30日だった(ペットショップは1ヶ月で来ると言っていた)。
 購入の時点でルーシーが股関節形成不全だと分かっていたら、自分はルーシーを飼わなかっただろうか?
 自分でもよく分からない。
 当時、ペットショップでボーダーコリーの姿を見ることは少なく、そのペットショップでも、ボーダーはたった1匹だった。この子を逃したら、もう自分は一生ボーダーを飼うことはないだろうと思っていた。だから「日常生活に困らないのであれば」と迎え入れていたかもしれない。
 その後分かったのだけれど、股関節形成不全の手術では片足1本50万円はかかるらしい。片足を手術しても、左右のバランスが狂って、最終的には両足を手術というケースも珍しくない。そこまで知っていたら、やっぱ止めてたかも(爆)。
 ただ、ひとつだけ確実なことがある。
 ルーシーが股関節形成不全でなかったら、絶対ダンスなんかに手を染めることはなかっただろう。
 グダグダなダンスに頭を抱えることもなかった訳で、そういう意味ではヤツの罪はますます深い(笑)。
 もし、このブログを読まれて(何の因果で 笑)ボーダーを飼いたいと思っておられる方がいたら、(あ)がお願いしたいことは次のとおりである。

 1.ペットショップやネットでは購入しない
 そうすることで、遺伝病のボーダーコリーは減ると思う。
 2.信頼できるブリーダーから購入する
 繁殖犬が「なんとかチャンピオン」とかを謳っているブリーダーよりも、遺伝病のリスクを減らすことに尽力しているブリーダーを見つけて欲しい。一番良いのは、実際にボーダーを飼っている人に尋ねること。また、ブリーダーの元に足を運んで親犬を見ることも大切だ。体格や運動性能もさることながら、子犬が受け継ぐ気質を知るべきだ。
 3.パートナーを見つけたら、末永く関わって欲しい
 ボーダーコリーだけではないだろうけど、犬に関われば関わるほど発見がある。「やっぱりボーダーね(チワワね、トイプーねetc.)」と思うことは、その子の特性の一部に過ぎない。その子だけの特性や面白いことがたくさんある。できるだけ貴方の犬と向き合って、短い犬の一生をできるだけ笑顔に満ちた日々にしてあげてください。そうすることで、きっと貴方も知らず笑顔になっているはずです。

 大きなお世話だろうけど、元気で幸せなボーダーコリーが増えて欲しい。そう心から願っています。

 最近(あ)が発見したのは、ルーシーが車の中で、うなされているような寝言を言うようになったこと。寝ていても 起きていてもウルサイ(笑)。