現代の邂逅

 10年ぶりに職場の同僚であるオーストラリア人と神戸で再会することになった。それも、ひょうたんから駒である。発端はfaceb○ok。たまたまfaceb○okを始めた友達2人が、自分の携帯に(あ)のメルアドを登録していた。本人達が、faceb○okに登録したところ――全くそんなつもりはなかったのに――携帯に登録していたメルアドのほぼ全てに、自動で勧誘メールが送られた。歩いて20分の距離とイギリスにいる友人2人(彼女と彼には全く接点ナシ)から、ほぼ同時にお誘いを受け(あ)は唸ってしまった。
 「うぅぅむ、facebo○kめの勢力が、こんなアナログ人間の元にまで押し寄せてきたか。」
 (あ)は携帯を持っていない。今のところ必要がないし、携帯に生活を支配されるのはシャクなので。それでも、なんだか世の中の流れに置いていかれている自分に「はっ」とする瞬間が増えてきた。
 それに、歩いて20分の友達はともかく(失礼)、イギリス人(これも昔の同僚)は、現在はFIFAで働いているので世界中を飛び回っており、かなりご無沙汰。弟分だったが、なかなか出会うチャンスはない。
 という訳で、ポリシーに反して自分もパソで登録してみた。すると、友人の友人てことで今度は「この人知りませんか」メールが届き、件のオーストラリア人に行き当たったワケ。
 9月頃にオーストラリア人の友だちから「今度日本に行くから会わない?」とメールが来た。で、神戸で彼女とボーイフレンドと会うことになった。
 はるばるオーストラリアから来日した友達と10年ぶりに顔を見つめ合いながら、互いに「なんか変な感じ〜」という言葉が口を突いて出た。
 イギリス人とオーストラリア人は、同じプログラムで(あ)と一緒に働くことになったけれど、直接の接点はなく、従って、この2人の間で「(あ)に会いたいね」なんて話は出なかったはずだ。たまたま(あ)が「まぁ、良いか」と登録したことで、10年近くも切れていた糸がつながった。それも、当の2人には全く見えないところで。こちらも、彼女に会いたいと思って登録した訳ではないし。いずれにしろfaceb○okに登録しなければ、こうして会うことはなかっただろう。
 なんだか自分達の分身が空中を浮遊していて、フワフワと流されている間に出会ったって感じかな?こういうのも、邂逅というのだろうか?
 別れ際に「faceb○okで私を見つけてくれて、ありがとう」礼儀正しい彼女は、笑顔でそう言った。
 文明の進歩とともに、日常の言語も変わっていく。「あ〜、現代では、そういう挨拶になるわけね。」と、アナログ人間は、またひとつ感心したのでありました(笑)。